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Tags: 時代劇  

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映画「十三人の刺客」

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1963年(昭和38年)に作られた工藤栄一監督作品「十三人の刺客」は集団抗争時代劇の代表的な作品とされている。
集団抗争時代劇というのは、名前のとおり集団対集団で斬り合って抗争を展開する時代劇である。
そのルーツを考えてみると、これは個人的な見解だが、黒澤明監督の時代劇に行き着くように思う。
そもそもそれまでの時代劇の立ち回りというのは、歌舞伎の殺陣から派生した影響を色濃く残しており、舞踊を思わせるような華麗なものであった。
しかし黒澤明監督はそれには飽き足らず、本物の刀で人を斬るようなリアルさで表現した。
「七人の侍」「用心棒」「椿三十郎」などがそれである。
斬る際の効果音や飛び散る血飛沫、それまでの時代劇にはなかった表現であった。
そのリアルで迫力ある殺陣が映画界に与えた影響は大きかった。
以後の時代劇、いや時代劇に限らずあらゆるアクションものが、こぞってそのリアルな表現方法を真似た。
さらに同時に巻き起こった残酷ブームがこれに拍車をかけたこともあり、さらに過激な表現がつぎつぎと現れるようになった。
そうした延長線上に出現したのが、集団抗争時代劇であった。
その中心にあるのが「十三人の刺客」という作品であった。
そして50年近くたった今、この映画のリメイクが行われたのである。

旧作の主役島田新左衛門役は片岡千恵蔵だったが、今回は役所広司が演じている。
重厚で渋い片岡千恵蔵だったが、役所広司の硬軟使い分けた演技は現代的な島田新左衛門像を創り出しており、魅力あふれて負けていない。
それを支える嵐寛寿郎が演じた倉永左平太は今回は松方弘樹が、そして丹波哲郎が演じた土井大炊頭利位は平幹二朗、月形龍之介が演じた尾張藩 牧野靭負を松本幸四郎といったベテラン陣を配してがっちりと脇を固めている。
さらに島田新左衛門と敵対する鬼頭半兵衛、これは前作では内田良平が演じたが、今回は市村正親、さらに一番の悪役、松平左兵衛督斉韶は前作では菅貫太郎が不敵に演じていたが、今回は何とスマップの稲垣吾郎が演じている。
その意外性には驚かされたが、これが見事的中、狂気じみた暴君をこれ以上はないほど憎々しく演じていた。
この役はいわばデーモンともいえる役で、この人物の出来如何でこの映画の価値が左右されるという重要な役である。
それを見事演じきった稲垣吾郎はまさに演技賞ものと言っていいだろう。
実際彼はこの役によって各種の演技賞を受賞している。
また意外性ということで言えば市村正親もそうである。
これまで時代劇とはほとんど縁のない彼を、この重要な役で起用したのはなかなかの冒険のようにも思えるが、こちらも見事な鬼頭半兵衛を演じており、役所広司を相手に回して一歩もひけをとっていない。
と、いずれもが適役ぞろい、さらに十三人の残りの俳優たちを見ていくと、新左衛門の甥、前作では里見浩太朗が演じた島田新六郎役は、山田孝之、西村晃演じた剣術の達人平山九十郎役(これは「七人の侍」で宮口精二が演じた剣術の達人、久蔵を念頭に置いた役のように思う)は伊原剛志、山城新伍が演じた木賀小弥太は伊勢谷友介、水島道太郎演じた槍の名人佐原平蔵を古田新太など、いずれも個性的な俳優たちを配しており、そうした俳優たちの競演もなかなか見ごたえがあった。
監督は三池崇史、どんな映画でも依頼のあった作品はすべて引き受けるといった多作で知られた監督であるが、今回はじっくりと正統派の時代劇作りに徹している、と思いきや途中からやはり彼特有のエログロ、ナンセンスな描き方が現れてきた。
三池監督としてはあまりに正統派の時代劇になってしまうことに、生理的な反発を感じた結果、こうした破調の表現を加えたのかもしれない。
どこかでその格調高さをぶち壊したいという衝動に駆られたのかもしれない。
こうなるともうこれは性(サガ)としか言いようがない。
こうした描き方については賛否両論あるだろうが、いずれにしてもこれが三池監督の映画のスタイルだということだ。

ところでクライマックスでの決闘シーンであるが、前作では13人対53人だったが、今回はその規模を大幅に変更、13対200となっている。
その分時間も長く(30分が50分に)描写も派手で過激になっており、荒唐無稽さも加わっている。
なるほど迫力あるシーンが続々登場してきてサービス精神旺盛なのはいいが、いささか長すぎたきらいがある。
だらけるとか退屈するとかではないものの、やはり長くなった分だけ少々メリハリが欠けたような印象を持ってしまった。
その長い時間を持続させるためのさまざまな工夫の痕は見えるが、やはり長すぎる。
しかしこれだけのシーンを撮るための労力は並大抵のことではなかっただろう。
そうしたことを思えば、その努力に対してはやはり素直に拍手を贈りたいと思う。

いずれにしてもリメイクとしてはよく出来た作品ではあった。
終始緊張感を失うことなく「平和な時代に人を斬ったことのない侍が刀を持って闘う」といった迫力は間違いなく感じることができたのであった。


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