風に吹かれて

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Category: 日本映画

Tags: 仲代達矢  戦争映画  

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映画「人間の条件」2

人間の条件2

15日から始まった映画「人間の条件」全6部作一挙放映が一昨日終わった。
6日間かけて観続けた。
主人公梶の絶望的だが、しかし超人的とも思えるような確かな歩みに遅れまいと必死で着いて行った9時間38分だった。
それは、川津祐介演じる寺田二等兵が、梶の後を縋るような思いで必死に追い続けた姿とも重なるものだった。
梶は言う「オレのかかとを見ながら着いて来るだけでは、いつまでたっても一人前にはなれないぞ」と。
しかしそうやって追い続けることで、梶に批判的で勇ましい軍国少年だった寺田二等兵は「生きるということが、どうゆうことなのかが分かってきました。」というように変化していった。
それは観ていた私も同じで、この映画を観ることで、人間とは、生きるとは、そして人間を狂気に追い込む戦争とは、何なのかを真剣に考えさせられたのであった。
そして40年前、20代前半の頃に観た感動と興奮が、再び蘇って来たのである。

第1部・純愛編、第2部・激怒編、第3部・望郷編、第4部・戦雲編が公開されたのは昭和34(1959年)、第5部・死の脱出、第6部・曠野の彷徨は昭和36(1961年)に公開されている。
原作の小説「人間の条件」は、作者の五味川純平が自らの従軍体験を基に1955年に発表した小説である。
そして1300万部を売る超ベストセラーとなった。
五味川純平は東京外国語学校(現東京外国語大学)英文科を卒業後、満州鞍山の昭和製鋼所に入社。
1943年に召集を受け、満州東部国境線の各地を転々とした。
1945年8月のソ連軍の満州侵攻時には、所属部隊はソ連軍の攻撃を受けてほぼ全滅、生存者は五味川以下わずか数名だけだったという。
そうした過酷な戦争体験がこの小説の背景となっている。
また監督の小林正樹も同様の戦争体験をしている。
1941年(昭和16年)早稲田大学を卒業後、松竹に入社、数本の映画の助監督をした後、同年軍隊に召集される。
そして満州でソ連国境線の警備という軍務にあたる。
1944年(昭和19年)に宮古島へ移動、飛行場建設作業に従事する。
そして終戦直後は、労働要員として沖縄本島嘉手納捕虜収容所に収容されている。
このように原作者、監督ともに長期にわたる過酷な軍隊経験をしているのである。
そうした体験がこの映画で描かれた軍隊、戦場の嘘偽りのないリアリティーを生み出す背景となっている。
そしてそうした嘘偽りのない戦争の実態があますところなく描かれることによって、われわれ観客は驚愕し、激しく心を揺さぶられるのである。
まさに空前絶後の凄い映画であった。

また今回の放映では、毎回映画終了後に主演の仲代達矢へのインタビューが添えられていたのが、よかった。
撮影当時を振り返りながら語られる裏話を、毎回興味深く聞いた。
たとえば第3部・望郷編で印象深かったふたりの俳優、新城一等兵を演じた佐藤慶と小原二等兵を演じた田中邦衛は、どちらも仲代達矢の推薦によるものだといったことが語られた。
佐藤慶は俳優座での仲代の同期、田中邦衛は後輩という間柄で、ともに無名の俳優だったが、小林監督の相談を受けた仲代がふたりを強く推薦した。
そしてそれが見事に成功したと、当時を懐かしく思い出しながら話していた。
また撮影前には、撮影所内で1ヶ月間の軍隊生活を体験させられたとか、古兵から殴られるシーンではほんとうに殴られて顔がはれたといったエピソードも語られた。

人間の条件3

そしてラストシーンでの過酷な体験、雪原の中で倒れた梶の身体の上を雪が降り積もり、小さな雪の山ができるというシーンでは、ほんとうに雪の中で身体の上に雪が降り積もるまでじっと横たわっていたという。
そのなかで仲代は「凍死するということは、こういうことなのか」といった感想をもったと語っていた。
そして撮影がすべて終わり、ロケバスのなかに入ると、小林正樹監督がいたが、「ご苦労様」の一言もない。
役者としてそれは当然のことだといった態度であったという。
それこそが「鬼の小林」と呼ばれる所以だと仲代は笑って話していた。
そうした裏話の数々を聞けたことで、映画がよりいっそう興味深いものになっていった。

40年ぶりに観る「人間の条件」を果たして全編通して観るだけのエネルギーが残されているだろうかと懸念はしたが、観始めるとどんどんと引き込まれてゆき、一夜が終わるたびに次が待ち遠しく、気がつくと最終回まで一気に観てしまっていた。
そして昔と変わらぬ深い感動に包まれていた。
全巻の放映が終了した後、解説の山本晋也監督と小野文惠アナウンサーが感極まったように、思わずつぶやいた言葉、「梶は美千子のもとに帰ったんだ!」「そう、ほうんとうにそうですよね!」を聞いたときには、思わず胸が熱くなってしまった。
長い夜が続くと思っていたが、終わってみればあっという間の6日間であった。
いい映画を観た後の満足感が、しばらく続きそうである。


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