風に吹かれて

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蓮見圭一 「そらいろのクレヨン」

そらいろのクレヨン

「そらいろのクレヨン」は蓮見圭一の短編集、「かなしぃ。」「詩人の恋」「セイロンの三人の王子」「1989、東京」「そらいろのクレヨン」の5編が収録されている。
「心の壁、愛の歌」「別れの時まで」に続いて蓮見圭一の小説はこれが3冊目。
「セイロンの三人の王子」「1989、東京」を除いた3つの作品はどれも作者を思わせるような小説家が主人公。
「かなしぃ。」は30歳になる小説家が、友人の結婚式に出席するために帰郷、そこでの同窓会めいた出来事をスケッチ風に綴った小説。
「詩人の恋」は小説家が小説を仕上げるにあたっての担当の編集者との交流を描いた小説。
そして表題作になる「そらいろのクレヨン」は難病で余命いくばくもない子供を抱えた小説家の話。
いずれも小説家が主人公ということで、私小説といった趣があるが、必ずしも作者自身の経験に裏打ちされているというわけでもなさそうだ。
このなかでは、「詩人の恋」がいちばん印象に残った。
優秀な編集者と小説家の関係が興味深く、これを読むことで、小説という作品は必ずしも作者だけのものではなく、編集者の陰の力も見逃せないということをあらためて教えられた。
蓮見圭一の小説は、どの作品も音楽との係わり合いが深いが、この作品でも、グレン・グールドの弾くベートーベンのピアノ・ソナタやローリング・ストーンズ、またフリッツ・ヴェンダーリヒが歌うシューマンの「詩人の恋」などがさりげなく話の中に挿入されており、小説に彩りを与えている。
またもうひとつの特徴である、小説家や詩人の言葉の引用、そして主人公自身の言葉が印象的に散りばめられており、それによって作品にそこはかとない味わいを醸し出している。
それはたとえば次のようなもの。
「羊として人生を送る代価は退屈。狼の生は孤独。どっちの人生を取るか慎重に考えて」
「真顔で嘘をつけるようになれば大人になった証拠だ」
「うれしきもの まだ見ぬ物語」(枕草子)
「時代が変われば小鳥も変わる、小鳥が変われば歌も変わる。」(ハイネ)
「明日終末が訪れようとも、私は今日林檎の木を植える。」(ゲオルギウ)等々。

こうして主人公の小説家に同化しながら、編集者との魅力ある数日間をともに経験することになる。
日常生活からちょっとだけ離れた、洒落た大人の時間と空間を味わうことのできる小説であった。
読み終わった後、この小説に登場してきたさまざまな音楽を、いちど聴いてみたいと思った。


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テーマ : 読書記録  ジャンル : 小説・文学

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