沢木耕太郎「あなたがいる場所」

沢木耕太郎、初の短編集。
9つの短編が収められており、どれもごくありふれた日常を描いているが、そんな物語を読み進んでいるうちに、ふと気づくと意外な事実に直面させられることになる。
そんなちょっと意外性のある日常の物語が、さりげなく展開されていく。
作者が言うように「東京の大きな駅からバスに乗って20分くらいの町に住む人たちの物語」が「最後まで読み通せることのできるわかりやすさ」で書かれており、さらりと読める。
だが噛みしめるほどに、いっけん意味がなさそうに見える話のなかにも、案外底の深いものがあることに気づかされる。
そしてそこから漂ってくる人生の痛みや不条理といったものに、心動かされるのである。
ノンフィクション作家として名高い沢木耕太郎が、フィクションの世界で今後どんな小説を書いていくのか、読んでいるうちに、いつしかそんなことにも興味を惹かれていった。


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