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Category: 読書

Tags: 百田尚樹  

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百田尚樹「ボックス!」

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百田尚樹の小説「ボックス!」を読み終わった。
今朝も4時に目が覚めて、そのまま寝床のなかでこれを読んでいたが、何回も泣かされてしまった。
百田尚樹の小説は「永遠の0」、「影法師」、「モンスター」に続いてこれが4冊目になる。
どの小説もおもしろく、作品ごとに描かれる世界がまったく異なる。
最初に読んだ「永遠の0」は太平洋戦争を舞台にしたゼロ戦のパイロットの話、次に読んだ「影法師」は時代劇、3冊目の「モンスター」は美人に変身した女の復讐と純愛の物語、そして「ボックス」はアマチュア・ボクシングの世界と、一作ごとに目まぐるしくその世界を変えていく。
これほど一作ごとに色を変えていく作家もめずらしい。
しかもどれひとつとして外れはなく、おもしろい小説ばかり、なかでも今回読んだ「ボックス」は特に面白かった。
まさに血湧き肉踊るという形容が相応しい内容の小説だった。
「永遠の0」や「影法師」でも泣かされたが、「ボックス」は、それ以上だった。
またボクシングのファイト・シーンは臨場感溢れて、迫力満点。
本物のボクシングをリング脇で見ているような錯覚を覚えるほどで、その興奮がまだ冷めやらない。

主人公は鏑矢と木樽という高校一年生の少年ふたり。
鏑矢は天才型のボクサー、そして木樽は努力型のボクサー。
対照的なふたりは、幼い頃からの親友同士。
わんぱくで喧嘩の強かった鏑矢は、ひ弱くていじめられっ子の木樽をいつも助けるという少年だった。
そんなふたりが同じ高校に進学して、小学校以来の再会を果たすことになる。
鏑矢は一年生であるにも関わらず、ボクシング部のエース、そしていっぽう木樽は進学コースのクラスで1、2番を争うという秀才である。
ボクシングにはまったく縁のなかった木樽だが、あることがきっかけでボクシングの世界へと足を踏み入れることになる。
そして地道な努力を重ねるうちに、次第に彼の中で眠っていた才能が開花していく。
そんな二人を見守る英語教師の高津耀子、元大学チャンピオンであるボクシング部監督の沢木、鏑矢に憧れる同級生の丸野、彼女は学年トップの成績という秀才であるにも関わらず、自らすすんでボクシング部のマネージャーになる。
そして鏑矢と木樽の前につぎつぎと現れるライバルたち、なかでも超高校級の選手である稲村が、ふたりの宿敵として立ちはだかってくる。
こうした物語のなかで、ふたりの熱い友情を柱にした物語が繰り広げられていく。
そこで経験する栄光や挫折、そうしたものを通してしだいに成長していく高校生の姿がみずみずしく描かれていくのである。

百田尚樹の小説は「影法師」にしても「モンスター」にしても、そしてこの「ボックス!」にしても、いずれも幼いときに出会ったふたりが、数奇な運命のなかで過酷な体験をするといった物語になっている。
また「永遠の0」もその形を少しばかり変形させた物語で、いずれも人生を変えるほどの相手と出合うといった内容の物語になっている。
そうしたパターンを手を変え、品を変えて繰り返しているのである。
とくに「影法師」では主人公ふたりが天才型と努力型の剣術の使い手で、しかも一方が自分を犠牲にして相手に尽くすといった献身が描かれるが、「ボックス!」でもそれと同様のパターンが繰り返されている。
というよりも読むのが逆になってしまったが、作品としては「ボックス!」が先に書かれたものなので、「影法師」がそれを踏み台にしているといったほうがより正確ではある。
とにかく「ボックス!」の鏑矢の純情なまでの献身ぶりには泣かされてしまった。
またもうひとつ言えば、女子マネージャー丸野の献身ぶりにもまた涙を誘われた。

百田尚樹は学生時代にアマチュア・ボクシングの世界に身をおいたことがあるそうだ。
そうした経験がこの小説のベースになっているが、それを生かしてこの小説の中ではボクシングについての薀蓄が詳しく語られていく。
ボクシングについてのさまざまな知識が詰め込まれており、ボクシングと無縁の人が読んでも、その世界のことがよく分かる。
これを読むことで、にわかボクシング通になれるのでは、と思えるほど。
たとえば、この本の題名である「ボックス!」という言葉は、ボクシング用語で「戦え!」という意味である。
英語の「Box」には「ボクシングをする」という意味があり、そこからきた言葉である。
リング上で、レフェリーが選手に試合を続行させる際にかける言葉で、かつては「ファイト」といった言葉が使われていたが、今は「ボックス」だそうだ。
また「サイエンス」という言葉は、「科学」という意味のほかに、「ボクシングの技術」といった意味もある。
これらはほんの一例だが、そうした薀蓄がつぎつぎと登場してくる。
そうした知識に助けられて、ボクシング・シーンがさらにおもしろいものになってくる。
読むうちにボクシングというスポーツの世界がいかに奥深く、そして魅力に溢れたもなのかが分かってくるとともに、知らず知らずのうちに、その魅力に囚われているのに気づくことになる。
これほどボクシングについて掘り下げて書かれた小説を読むのは、初めてであった。
やはり作者自身がその世界に身を置いて体験したことが裏打ちされているからこそのことなのであろう。

百田尚樹という作家は、面白いエンターテインメントを作り上げて読者を夢中にさせるための抜群のテクニックを身につけた作家だと思う。
それは常に視聴者を退屈させず、面白さを提供させ続けなければいけない放送作家を長年続けたなかで培われたものにちがいない。
それが、これまで彼の作品を読んできたなかから感じた、いちばんの感想であった。

この作品は映画化もされている。
近いうちにそちらもぜひ観てみたいと思うが、ここしばらくは、この傑作青春小説の心地よい余韻に浸っていたいと思っている。

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テーマ : 小説  ジャンル : 小説・文学

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