風に吹かれて

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吉行和子「ひとり語り」

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先々週(1月24日)のラジオ番組「ラジオビタミン」の「ときめきインタビュー」に、女優の吉行和子が出演しており、芝居との出会いやその世界に入った経緯などを話していた。
興味深く聞いたが、時間がなかったためにほんのさわりを聞いただけで、残念ながらその後の詳しい話は聞くことができなかった。
ちょっと後ろ髪をひかれる思いだったが、そういえば彼女の書いた半自叙伝が確か出ていたなと思い出し、図書館で探してみると「ひとり語り」という本が見つかった。
さっそく借りることにして、読み始めたが意外と時間がかかってしまい、先日ようやく読み終えた。
そこで、ちょっと紹介してみることにした。

まずは吉行和子の経歴を、この本のなかから拾って紹介すると。
東京生れ。女子学院高等学校を卒業。在学中に劇団民藝に入所。
父エイスケ、兄淳之介、妹理恵はいずれも作家。母あぐりは日本美容師界の草分け的存在である。
1957(昭和32)年「アンネの日記」で初主演。
日本アカデミー賞優秀主演女優賞、毎日映画コンクール田中絹代賞、紀伊国屋演劇賞個人賞など、舞台・映画での受賞多数。
1984年、著書『どこまで演れば気がすむの』で第32回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。

女優歴50年以上という大ベテランである。
最近はテレビの旅行番組などに親友の女優、富士真奈美とともに出演して、そのちょっと天然ボケな個性で笑いを誘ったりしているでご存知の方も多いだろう。
この本ではラジオのインタビューで聴いた話と同じく、喘息もちの病弱な少女だった彼女が、たまたま母親が客からもらったチケットで劇団民藝の演劇を観にゆき、その世界に魅了され、劇団の研究生募集の試験を受けて見事合格、以後50年以上に渡って続けることになる女優生活のきっかけが、まず初めに書かれている。
そしてその後の内容を目次で紹介すると、次のようなもの

衣裳係になるはずが/研究所生活/エイスケの遺した雑誌/あぐりの再婚/下手すぎる/アンネの日記/淳之介の好み/ポーギィとベス/日活映画の大スター/初めての海外旅行/訪中日本新劇団/「民藝」やめたら/早稲田小劇場/商業演劇デビュー/鶴田浩二さんと美輪明宏さん/おすぎとピーコ/蜜の味/妹と二人旅/アメリカ巡回公演/尋問/愛の亡霊/カンヌ映画祭/角栄氏と辻和子さん/女三人の旅/一人芝居/大病/鍼と俳句と借金/オサラバー/MITSUKO/ロンスペルク城/これでおしまい

となっている。

女優、吉行和子の存在を知ったのは、昭和30年代の日活映画のなかでだった。
昭和29年に映画製作を再開した新生日活は、所属俳優の員数不足といった事情があり、その解決策のひとつとして新劇から俳優供給を受けることで問題解決を図ろうとした。
そのひとつが劇団民藝との契約であった。
それまでは左翼傾向の強い民藝の俳優たちは、映画には出さないという「五社協定」によって、映画に出演することができなかったが、日活はその協定に入っていなかったことから、映画出演が可能になった。
そうしたことで新人女優の吉行和子も映画に駆り出されることになり、主に文芸映画を中心につぎつぎと出演することになる。
この頃の日活映画で知った民藝の俳優たちは数多い。
主な俳優たちを挙げてみると、宇野重吉、滝沢修をはじめ、北林谷栄、清水将夫、芦田伸介、信欣三、下元勉、小夜福子、奈良岡朋子、南風洋子、草薙幸二郎、大滝秀治、鈴木瑞穂、内藤武敏といった錚々たるメンバーである。
ほとんどが日活映画を観ることで馴染んだ俳優たちばかりであった。
今思えば彼らが日活映画で果たした役割は、大きかった。
ニューフェイス募集によって集められた若い俳優たちを、こうしたメンバーが脇で支えることで、映画に幅と厚みをもたせることができたのだから。

吉行和子はこうした劇団活動を約10数年続けた後に「民藝」を退団する。
そして周囲の反対を押し切って、当時隆盛を極めつつあったアングラ劇や商業演劇への出演といった未知の世界へと足を踏み入れていくことになる。
病弱で引っ込み思案な少女だった彼女が、このように果敢な挑戦を続ける女優になったのは、やはり彼女が育ったユニークな家庭環境が大きかったのだと思う。
そうした世間の常識に囚われない、個性的な家族についても詳しく書かれており、興味は尽きない。
ダダイストであった父エイスケは詩人であり小説家であった。
母親あぐりとは10代で結婚、34歳という若さで亡くなっている。
そんな破天荒な夫を支え、夫エイスケの死後も(生前も母子家庭のようだった、とある。)女手ひとつで3人の子供を育て上げた。
そして百歳を越えた現在も矍鑠と健在である。
兄淳之介は芥川賞作家、妹理恵も同様の芥川賞作家であり詩人である。
そうした家庭環境で育ったことが、「反対されればされるほど、やる気を出す」という反骨精神、女優魂へと繋がっているのであろう。
そして「喘息」という病に苦しめられたことが、「我慢強い」性格を作り上げた。
柔らかさのなかにも、一本芯の通った強さをもった彼女の個性は、こうした性格に裏づけされている。
派手でもなく、といって地味でもなく、物事に囚われない独自の女優人生を歩んでいる吉行和子は、今後もまだまだ活躍し続けていくに違いないという感想を、この本を読んだ後に確信したのであった。


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