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Category: 読書

Tags: 伊坂幸太郎  ミステリー  

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伊坂幸太郎「重力ピエロ」

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先日観た映画「重力ピエロ」の原作を読了。
これで映画を観た時に感じたいくつかの疑問点が氷解した。
とくに何でこんな手の込んだ放火事件を起こしたのかがよく分からなかったが、その意味するところが原作を読むことで判明した。
それは泉水(いずみ)と春という兄弟の特殊な関係と、それぞれの性格によるものであるが、それが原作を読むことでよく理解できたのである。
ミステリーの場合、映画では複雑に入り組んだ事実関係や説明的なセリフといったものが、速いスピードで通り過ぎていくために、どうしても筋立てを追うことだけに一生懸命になって、ディテールの重要な点を見逃してしまうということがよくある。
この映画の場合もそういったことがいくつかあり、言わんとすることの細部を理解することが疎かになってしまったようである。
その点、原作だと、じっくりと読むことができるので、そうした見逃しが少なくなる。
今回は映画を観た後に原作を読んで補足することで、よりその世界を理解することができたように思う。

ところでこの原作には比喩と引用がかなり多く使われている。
それがこの小説の大きな特徴のようである。
いくつか挙げてみると、ネアンデルタール人、クロマニヨン人、ラスコーの壁画、ピカソ、ゴッホ、ガンジー、ジョルジ・バタイユ、マイケル・ジョーダン、ゴダール、ローランド・カーク、ヘップバーン、ジャン・ポール・ゴルチェ、グラハム・ベル、エッシャー、シャガール、フェルマーの最終定理、ヒトゲノム、コノハナノサクヤビメ等々。
そしてそれらの引用から導き出された比喩が、さらに小説に深い味わいを生み出している。
そうしたことを考えるとき、ふと村上春樹の小説との共通性といったことを感じるのだが、どうであろうか。
そしてそんな比喩と引用が醸しだす洗練された味わいが、伊坂幸太郎の小説の人気の秘密の一端のようにも思われるのである。

映画のレビューでも書いた「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」 という印象的なセリフが小説のなかにも書かれていたが、それはこの小説を書く際の作者自身のスタンスでもあったにちがいない。
だからこそ、この小説が重苦しいだけのものにはならなかったのだと思う。
そしてそれがさらにこの小説を、より洗練されたものにした要素でもある。

映画では登場しなかった黒澤という探偵の存在がなかなか魅力的でよかった。
あまり多く登場する人物ではないが、謎を秘めた男であり、かつまたかなり重要な人物として描かれている。
このキャラクターを生かして、また別な物語を作れるのではなかろうかと思わせるような魅力を備えている。

最後にこの小説の題名になっている「重力ピエロ」に関連したセリフを書きとめておこうと思う。
「ピエロは動きを忘れさせるために、メイクをし、玉に乗り、空中ブランコで優雅に飛び、時には不恰好に飛ぶ。何かを忘れさせるためにだ。」


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テーマ : 小説  ジャンル : 小説・文学

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ラッシュライフを読み終わってからちょっと間が空きましたが、またまた伊坂幸太郎の本を読み終わりました。チルドレン、グラスホッパー、魔王、終末のフールも購入済みなので、発行順に読んで行く予定です。さて、重力ピエロですが、これ映画化されてましたね。名前だけは...
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