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風に吹かれて

My Life & My Favorite things

Category: 読書

Tags: 短編小説集  

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志水辰夫「男坂」

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「男坂」とは寺社の参道などにある2本の坂道のうち、急なほうの坂のことである。
ちなみに緩いほうの坂を女坂という。
この小説に出てくる男たちは、その坂道を登るのではなく、ゆっくりと降りている。
人生という荒波のなかで、さまざまな格闘をしてきたにちがいない男たち、しかしそうした盛りの時は過ぎ、今は黄昏の時を迎えようとしている。
そんな男たちの翳りある日々を描いた短編集である。

刑務所帰りの旧友と偶然再会し、執拗につきまとわれる男、故郷を捨てて今は建設現場でひっそりと生きる男、郷里を捨て、ふと立ち寄った街で酒場の女と知り合い、そのまま住み着いてしまった男、会社を乗っ取られ、故郷に戻って痴呆の母親を介護する男、そんなさまざまな、わけありの男たちが登場する。
その日常に華やかなものは何もない。
言ってしまえば、彼らは人生の敗残者である。
夢や希望とは無縁の日常を、ある種の諦念のようなものを抱えて生きている。
しかしそんな日常のなかにあっても、ほんの一瞬だけ光り輝くような瞬間が訪れるときがある。
そうした瞬間を、すくい取って描いたのがこれらの小説である。
陽のあたらない坂道をひたすら歩き続けてきた男たち、幾たびか苦いものも味わってきたにちがいない男たち、そんな愚直な生き方をしてきた男だからこそ見せる優しさや心の機微が、静かに胸を打つ。
地味ではあるが、心地よく酔わせてくれる小説である。

ところで志水辰夫の小説を読んだのは、これが初めてである。
1936年生まれの現在73歳、公務員、出版社勤務、フリーライターを経て、40代で小説を書き始めた小説家である。
ミステリーや冒険小説を主に書くが、ときに恋愛小説、時代小説も手がけるという。
そして今後は時代小説に的を絞って専念するそうだ。

機会があれば彼の時代小説も読んでみたいと思っている。

志水辰夫公式ページ


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テーマ : ブックレビュー  ジャンル : 小説・文学

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Author:cooldaddy
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年齢:今年(2018年)70歳です。
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還暦(10年前)という節目を迎え、何か新しいことを始めようとブログを開設しました。
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