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風に吹かれて

My Life & My Favorite things

Category: 読書

Tags: 太宰治  

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太宰治「ヴィヨンの妻」

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この小説で太宰のユーモアにはじめて触れた。

主人公の小説家が飲み屋の酒代を踏み倒し、それでも足りずに、足しげく通いつめ、その都度酒代を払わず、延々と踏み倒していく。
その大胆さと巧妙さには、思わず笑ってしまった。
作中でも飲み屋の夫婦から事の次第を聞かされて、妻が思わず笑っているが、読んでいるこちらも吹き出してしまった。
切羽詰ったギリギリの生き方は、醒めた目から見ると、ある種の滑稽さを感じさせる。
そして絶望や哀しみで身動きできなくなったとき、後はもう笑うしかないという状況が見事に表現されている。
こういう描写を読んでいるうちに、太宰の同郷の作家、葛西善蔵の小説をふと思い出した。
貧困や絶望を描くという点で、太宰はこの敬愛する作家をお手本としたのかもしれない。

「ヴィヨン」というのは、15世紀フランスの詩人「フランソワ・ヴィヨン」のことである。
無頼、放蕩の生涯を送った詩人で、「ヴィヨンの妻」の小説家をこの無頼の詩人に重ね合わせている。
その夫の放蕩が作り出した借金の穴埋めに、妻が自ら飲み屋に押しかけて、働き始める。
出口の見えない逆境にも動じず、毅然と立ち向かっていく妻の逞しさ、健気さ、哀しみが、非常に印象的である。
そして太宰の苦悩の底にある潔癖なまでの倫理観が痛々しいまでに伝わってくる。
絶望を描きながらも、同時に生きる力も感じさせられる。

この短編集にはこの他にも「親友交歓」「トカトントン」「父」「母」「おさん」「家庭の幸福」「桜桃」などの作品が収められている。
どの小説も味わい深い。
だんだんと太宰の小説の魅力に嵌っていきそうだ。


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テーマ : 小説  ジャンル : 小説・文学

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還暦(10年前)という節目を迎え、何か新しいことを始めようとブログを開設しました。
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