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風に吹かれて

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Category: 読書

Tags: 伊坂幸太郎  

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伊坂幸太郎「終末のフール」

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伊坂幸太郎「終末のフール」を読み終えた。
これは、先日四国に帰省した際に、列車の中で読もうと思って買った本だ。
なぜこれを選んだかといえば、伊坂幸太郎原作の映画「アヒルと鴨のコインロッカー」を観て以来、彼の名前をよく目にするようになり、機会があれば何か一冊、彼の小説を読んでみようと思っていたこと、またつい最近のことだが、何気なく聞いていたラジオ放送のなかで、たまたまこの本のことが紹介されていて興味をおぼえたこと、それが、この本を選んだ理由である。

舞台は、小惑星が地球に落ちてくると発表されてから5年後の仙台郊外のある団地。
この5年の間に世界は混乱、恐怖と焦りのなかで逃げ出す者、自ら死を選ぶ者、そして暴れ狂う者、さまざまなパニックが繰り返されてきた。
そんな混乱もようやく治まり、小惑星が落ちてくるまであと3年となった、嵐の前の静けさを思わせる小康状態のなかで、生きる人びとの姿を描いている。
「終末のフール」「太陽のシール」「籠城のビール」「冬眠のガール」「鋼鉄のウール」「天体のヨール」「演劇のオール」「深海のポール」といった8つの短編から、成っている。
それぞれが独立した話でありながら、登場人物はすべてヒルズタウンという名の団地の住人ということで、それぞれの物語は微妙にクロスしていく。
その終末世界のなかで、人はどのように考え、どのように生きていくのかが、興味深く描かれている。

設定が秀逸である。
一見SF的ではあるが、「小惑星が地球に落ちてくる」という設定以外は、ふつうの日常生活とあまり変わりがない。
だが、その日常の裏には常に3年後の確実な「死」がつきまとっている。
人はいつも「死」を意識して生きているわけではない。
いや、むしろほとんど「死」を意識せずに生きている。
「死」はいつも遠いもの、自分とはあまり縁のないものと考えている。
そこに嫌がうえにも「死」を考えざるをえない状況が生まれてくると、果たしてどんなものが見えてくるのか。
迫り来る「死」を設定することで、より鮮明に「生」を浮かび上がらせようとする。

これは、たとえば癌で余命幾ばくもないと告知された人が、残された人生をどう生きていくかというのと似たような物語ともいえるが、微妙な違いも感じられてくる。
とにかくここでは全員に確実な死が約束されているわけで、それだけにさまざまな「生」が重層的に浮かび上がってくる。
だが彼らはけっしてじたばたとはしていない。
そして諦念でもない、絶望でもない、淋しいような、哀しいような、明るいような、そんな微妙な感覚のなかで生きる姿がうまく描かれている。
そして人が生きていくうえで、やはり人とのつながりや触れ合いこそが力の源になるのだなあ、ということをあらためて感じさせられた。

果たしてこうした時、自分はどんな終末を迎えようとするだろうか、この本を読みながら、そんなことも考えさせられた。


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テーマ : 短編小説  ジャンル : 小説・文学

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年齢:今年(2018年)70歳です。
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還暦(10年前)という節目を迎え、何か新しいことを始めようとブログを開設しました。
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