FC2ブログ

風に吹かれて

My Life & My Favorite things

Category: 読書

Tags: 葉室麟  時代小説  

Trackback (0)

葉室麟「銀漢の賦」

ginkannohu.jpg
「銀漢」とは天の川のことである。
そして同時に主人公の男3人のことも指している。
少年時代を共に同じ道場で過ごした、十蔵、源五、小弥太という3人の男たちの数奇な運命を描いた時代小説である。
友情で結ばれた3人だが、それぞれ別な道を行くなかで、友情だけではどうしようもない過酷な現実に直面する。
そのなかで時には敵対し、また味方になりと、立場を入れ替えながら現在と過去の男たちの物語が描かれていく。
「銀漢とは天の川のことなのだろうが、頭に霜を置き、年齢を重ねた漢(おとこ)も銀漢かもしれんな。」といった源五の思いが示すように、人生の終末を迎えようとする男たちの覚悟や諦念が物語の中で錯綜してゆく。
武家社会につきもののお家騒動、井堰建設という難工事、百姓一揆、藩政をめぐるさまざまな難問を背景に描かれる友情の物語が爽やかな余韻を残す。
面白くて、一気に読んでしまった。

印象に残った場面に、つぎのような箇所があった。
これを読んで、この小説の一端を味わってもらえればと思う。

 ある日、三人で千鶴が床の間の花器に石蕗(つわぶき)を活きているのを見ていた時のことだ。千鶴が思い切りよく葉に鋏を入れるのを見て源五は思わず、
「花というものは自然に咲いておってきれいなものだと思いますが、やはり葉は切らねばならぬものですか」
と聞いた。千鶴はにこりと笑って、
「源五殿は、人は皆、生まれたままで美しい心を持っているとお思いですか」
「いや、それは――」
源五が頭をかくと、
「人も花も同じです。生まれ持ったものは尊いでしょうが、それを美しくするためにはおのずと切らなければならないものがあります。花は鋏を入れますが、人は勉学や武術で鍛錬して自分の心を美しくするのです」
千鶴は静かに石蕗に鋏を入れながら、
「花の美しさは形にありますが、人の美しさは覚悟と心映えではないでしょうか」
と言うのだった。


作者の葉室麟は1951年生まれ、北九州市出身で、地方紙記者等を経た後に50歳から創作活動に入った小説家である。
この小説で第14回松本清張賞を受賞している。
このほかの作品には「乾山晩愁」、「いのちなりけり」などがある。


ブログランキング・にほんブログ村へ 
  ↑ クリック、お願いします。 ↑
スポンサーサイト



テーマ : 読書記録  ジャンル : 小説・文学

Newer Entry八代目桂文楽「明烏」 Older Entry明日もいい天気かな?
カレンダー
09 | 2019/10 | 11
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
プロフィール

cooldaddy

Author:cooldaddy
住んでいるところ:青森県弘前市
出身地:香川県
年齢:今年(2018年)70歳です。
性別:男

還暦(10年前)という節目を迎え、何か新しいことを始めようとブログを開設しました。
趣味のこと、生活のこと、心に残ったことなど、My Favorite thingsを、気ままに書いていこうと思います。
末永くおつき合いください。

映画サイト「マイ・シネマ館」もやっています。
こちらもよろしく。

ランキングサイトに参加しています。
もしよければクリック、お願いします。↓
ブログランキング・にほんブログ村へ 

月別アーカイブ
cooldaddyの本棚
FC2ブログランキング
ブログ内検索
QRコード
QRコード

1234567891011121314151617181920212223242526272829303110 2019