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風に吹かれて

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Category: 日本映画

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映画「嫌われ松子の一生」

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大輪の花を咲かせるばかりが人生ではない。
踏まれても踏まれても小さな花を咲かせようとする、野の花のような人生もある。
「嫌われ松子の一生」は、そんな小さな花を咲かせることを夢見た乙女の物語である。
愛されることを求め、しかしその思いはけっして遂げられることはなく、描いた夢とは違った過酷な人生を生きていかざるをえなかった川尻松子(中谷美紀)。
昭和22年生まれという松子の生きた人生は、ちょうど同時代を生きてきた自分自身とも重なることもあり、特別な思い入れを感じてしまった。
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物語は彼女の甥である笙(瑛太)が、松子と関わりのあった人物たちから、生前の彼女について聞き取っていくという、「市民ケーン」を思わせるような回想形式で描かれていく。
そこから浮かび上がってくる不幸で悲惨な、ひとりの孤独な女の人生。
「これで人生が終わった」と呟かざるを得ないような不幸な出来事に何度も遭遇しながらも、それでも健気に生きていく松子という女性に甥の笙は次第にひきつけられていく。
絵に描いたような不運と悲惨さ、そして愚かしさに彩られた松子の人生だが、観ているこちらが感じるのは、けっして悲惨なだけのものではない。
というよりも、どんなひどい目に会おうとも、愛を求める乙女の気持ちが失われることがないという生き方に、逆に力強ささえ感じてしまう。
それは同時に甥の笙が受け取る印象でもある。
そして彼が松子の人生にしだいに感化されていくように、われわれ観客も、そこから人生の苦渋だけではない、力強く生きるべきだというメッセージも受け取ることになる。
この映画を観て流す涙は、松子の不幸に対する涙などではけっしてない。
どういう形であれ、松子自身が自らの人生を精一杯生き切ったということへの感動の涙なのである。
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この映画がミュージカル風シーンを挿入したり、なつメロから童謡までの楽曲を多用したり、CGやビビッドな原色を使ったポップでファンタジーな映像で描かれているということも、そうした感動を支える大きな要素になっている。
さらに喜劇、悲劇のどちらの側面も併せ持ち、目の離せないエネルギッシュな展開、俳優たちの熱演(とくに松子を演じた中谷美紀は素晴らしい)、そんな映画の魅力がたっぷりと詰め込まれている。
どこまでも転げ落ちていく不幸な女の物語を、こうした壮大なメルヘンに仕立て上げた中島哲也監督の手腕は、まさに見上げた才能と云わざるを得ないだろう。
そして間違いなく現代日本映画を代表する傑作のひとつに数えられる作品である。
妻につき合ってこの映画をもういちど観かえしたことで、そのことをあらためて確認し直すことになったのである。

映画を観終わった後も、「まげて、のばして」のメロディーがいつまでも耳に残って離れない。





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テーマ : DVDで見た映画  ジャンル : 映画

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還暦(10年前)という節目を迎え、何か新しいことを始めようとブログを開設しました。
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