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風に吹かれて

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Category: 落語

Tags: エッセイ・評論  

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立川談春「赤めだか」

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まるで小説を読んでいるようなおもしろさ。
落語家への賞賛だと、「小説」というよりも「落語」というべきか。
とにかく、そのおもしろさに一気に読んでしまった。

著者の立川談春はその名のとおり立川談志の弟子である。
昭和59年、高校を中退して立川談志に入門、新聞販売店で働きながらの前座修業が始まった。
その厳しい修業を経て、二ツ目、そして真打ちになるまでの体験がここには書かれているが、この本を書いたそもそもの動機が「談志のすごさを今残しておかなければ」というもの。
その言葉どおりに様々なエピソードによって談志のユニーク、かつ破天荒な人物像が浮かび上がってくる。
そしてそんな談志の無理難題や芸の厳しさに耐えて次第に芸人として成長していく様子が、時に笑いを、時に涙を誘いながら確かな文章によって書かれていく。
「修業とは矛盾に耐える事だ」
「前座の間はな、どうやったら俺が喜ぶか、それだけ考えてろ。患うほど、気を遣え。お前は俺に惚れて落語家になったんだろう。本気で惚れてる相手なら死ぬ気で尽くせ。サシで付き合って相手を喜ばせられないような奴が何百人という客を満足させられるわけがねェだろう。」
こういった談志の言葉が示すような厳しい修業の毎日。
「やるなと云っても、やる奴はやる。やれと云ったところでやらん奴はやらん」
「お前は落語家に向いていない。落語家をやめろ。」と突き放されながらも、工夫を重ねての落語のけいこ。
そして「立川流の二ツ目の基準は、古典落語なら五十席覚えること。それに寄席の鳴り物を一通り打てること。講談の修羅場が噺せること。あとは踊りの二つ、三つを踊れること」を目指して修業に励む毎日。
だが、これはあくまでも原則であって、談志が首をタテに振らなければ二ツ目にはなれない。
どこをどうすればいいといった明確な基準のある試験ではない。
極論すれば、試験なんてあってないがごとし。
談志の気分ひとつでどちらに転ぶか皆目見当がつかない、といった内容の試験なのだ。
以前NHKで放送された「まるごと立川談志」という番組のなかで、その昇進試験の現場を目にしたことがあったが、張り詰めた緊張感のなか、つぎつぎと繰り出される談志の課題に右往左往しながら芸を見せる弟子たちの姿に戦慄さえ覚えるほどだった。
これをクリアするのは並大抵のことではないナ、というのがそれを見たときの感想だった。
努力だけでは駄目、やはりそれなりの才能がなければ、いくら努力、我慢を続けても、この試験はクリアできないと知ったのである。
実際、談春といっしょに二ツ目昇進を果たしたのはぜんぶで4人だが、それまでに20人以上が脱落して落語界から去っている。
そんな厳しい難関を乗り越えた弟子たちに向かって談志は次のように云う。
「いいか、オレのところで二ツ目になったということは、他の二ツ目とはモノが違うんだ。それはプライドを持っていい。今後は自分達のために毎日を生きろ。まずとりあえずは売れてこい。売れるための手段がわからないと云うならいつでも相談に来い。教えてやる。本当によく頑張った。誉めてやる。二ツ目として認めてやる。おめでとう。乾杯。」
談志はけっして厳しいだけの師匠ではない。
いくつものエピソードからそんな側面が見えてくる。
さらに談春の真打ち昇進にからむ小さんと談志のくだりには胸が熱くなった。

この本を読んで初めて落語家、立川談春を知った。
そういうことなので、立川談春の落語も当然聴いたことがない。
だがこんな面白い話を書ける落語家なのだから、その噺がおもしろくないはずがない。
機会があればぜひいちど彼の噺を聴いてみたいと思ったのである。
それがこの本を読んだ後の感想であった。

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テーマ : 落語  ジャンル : お笑い

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