横山秀夫「ノースライト」

図書館での予約待ちが数か月、ようやく順番が回ってきた。
本屋大賞にノミネートされた人気作である。
横山秀夫のミステリーを読むのは「64(ロクヨン)」以来のこと。
「ノースライト」はミステリーではあるが、犯罪が描かれるわけではない。
建築家ブルーノ・タウトをキーワードにした建築家の話が語られるだけ。
そんなものが果たしてミステリーになるのかとの疑問は、読み始めるとすぐに払拭された。
そしてあっという間に読み切ってしまった。
「ノースライト」とは住宅の北側から射し込む明かりのこと。
普通、住宅ではとり入れることのない明かりである。
その「ノースライト」に拘る建築士が、「あなたが住みたいと思う家を作って欲しい」という依頼を受けて、北側に大きな窓を持った家を設計する。
それが建築雑誌に紹介されて代表作になる。
だが、なぜか施主は新居には住まず、忽然と姿を消してしまう。
そして「ノースライト」の部屋には、「タウトの椅子」だけが残されていた。
その椅子を手掛かりに、施主一家の失踪の謎に迫ってゆく。
その探索のなかで別れた妻と娘との関係や、幼少期の暗い記憶などが、友人やライバルたちを絡ませながら描かれてゆく。
ミステリーとしての面白さはもちろんのこと、人間ドラマとしても秀逸。
「64」に劣らない面白さだった。


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