映画「万引き家族」

カンヌ映画祭パルムドール受賞ということで、話題になった映画だが、なかなか観る気にならなかった。
それがレンタル・ショップで旧作になったのを機会に、観てみることにしたのである。
是枝監督の映画はこれまで10本の作品を観てきたが、良かったのはデビュー作の「幻の光」と「誰も知らない」、「そして父になる」、「海街diary」。
残りの6作品(「ワンダフルライフ」、「DISTANCE」、「花よりもなほ」、「歩いても 歩いても」、「海よりもまだ深く」、「三度目の殺人」)は、残念ながら今ひとつ印象に残らないままで終わってしまった。
だからといってそれらの作品が駄作というわけではなく、それぞれに作家性の強いレベルの高い作品であることは間違いない。
だがあまりに淡々とし過ぎていて、ドラマとしての盛り上がりに欠けるところが、今ひとつ不満だった。
そうした傾向は是枝監督がドキュメンタリー映画出身ということからくるものだと思う。
出来るだけ作為的にならず、現実をありのままに切り取ろうとする習性が身についているからだろう。
だがそれがいったんツボにはまると、知らず知らずのうちに作品世界に絡み取られてしまう。
そんな粘着力をもっている。
ただそれも当たり外れがあるわけで、期待が大きいだけに外れたときの失望感も大きくなってしまう。
そんなことから、今回の「万引き家族」は観ることを躊躇していたというわけだ。
そして観た結果は?
ちょっと複雑なものがある。
キャスティングは、レギュラーともいえるリリー・フランキーと樹木希林に加えて是枝組初参加の安藤サクラ、松岡茉優という布陣で、監督好みのメンバーが揃っている。
なかでも最強メンバーともいえる安藤サクラが加わったことが大きい。
今回はどんな演技を見せてくれるか楽しみだったが、期待を裏切らないしなやかで心に刺さる渾身の演技だった。
また子役ふたりは、おそらくオーディションで選んだのだろうが、ともに自然な演技がとてもいい。
そんなメンバーたちが、楽しそうに家族を演じている。
そう、まさに楽しそうにである。
しかしその裏にあるものは?というのがこの映画の胆である。
そしてそれが徐々に明らかにされていく。
いつもながら是枝監督の映画は、いろいろと考えさせられる。
今回もその点は変わらないが、それでも意外とあっさりと終わってしまった、というのが正直なところ。
いまひとつ引っかかるものがなかったということで、いささか憾みが残ってしまったのである。
パルムドール作品ということで、いささか辛口な感想になってしまったが、それでも混迷する現代社会に対する辛辣なメッセージが込められた良作であることは間違いない。
そして社会の片隅に見捨てられた人間たちを、ひたすら掬い上げて作品化しようとする是枝監督の真摯な志には、素直に頭が下がる。
そうした思いをこちらも真摯に受け止めたいと思う。


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