Category: 外国映画
映画「ライ麦畑で出会ったら COMING THROUGH THE RY」

サリンジャーの小説「ライ麦畑でつかまえて(The Catcher in the Rye)」が発表されたのは、1951年。
出版と同時に大ベストセラーとなり、多くの若者の熱狂的な共感を呼んだ。
サリンジャーは一躍時代の寵児となった。
しかしその成功により、ニューヨークでの生活は次第に喧噪にさらされることになる。
そうした喧騒から逃れるため、サリンジャーはニューハンプシャー州の人里離れた土地に移住、そこで隠遁生活を送るようになる。
以後所在不明のまま世間との接触を断ち、誰とも会うことはなくなった。
その伝説のサリンジャーを探し出し、実際に会うことができたという監督自身の体験をベースに作られたのが、この映画である。
時は1969年、ペンシルベニア州の名門男子校で寮生活を送るジェイミーが主人公。
生徒や教師たちの俗物ぶりに馴染めず、浮いた存在となって学校生活を送っている。
それがもとで、生徒たちから悪戯やいじめを受けるという毎日である。
そうした鬱屈から逃れようと、自らを「ライ麦畑でつかまえて」の主人公・ホールデンになぞらえることで慰めとしている。
ある時その小説の演劇化を思いつく。
そしてシナリオを書き上げるが、上演するにはサリンジャーの許可が必要だと知り、寮を抜け出してサリンジャー探しの旅に出ることを決意する。
その旅の相棒となるのが、近くの女子高に通うディーディーというこましゃくれた女の子。
クラブの演劇活動を通して知り合った女子高生である。
彼女の大人びた助言と協力を得ながら、サリンジャー探しの旅が始まる。
その無鉄砲さ一途さが微笑ましくもあり、意地らしくもある。
そうした経験を踏むことで、少しづつ大人になるための階段を登って行くことになる。
未完成であるがゆえに悪戦苦闘するジェイミーの姿が痛々しい。
だれもがいちどは通過しなければならない苦く滑稽な青春という時代の姿が、優しく描かれていく。
ジェームズ・サドウィズ監督のデビュー作。
その丁寧な作りには好感が持てる。
しみじみと響く青春ロードムービーに、しばし心洗われる時間を過ごした。


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