映画「バハールの涙 LES FILLES DU SOLEIL」

戦う女たちの映画である。
比喩でいう戦いではなく、実際に戦場で銃を持って命のやり取りをする本当の意味での戦いである。
主人公のバハールは、女性部隊「太陽の女たち」のリーダー。
元弁護士で、夫と息子とともに平穏な日々を送っていたが、ある日突然ISの襲撃をうけ、夫と父親を殺される。
そして幼い息子は拉致され、彼女自身もISの性奴隷として囚われの身となる。
しかしそこを脱出、息子救出のために、クルド人女性部隊「太陽の女たち」の一員となって武器をとる。
こうした経緯が、部隊の取材にやってきたフランス人女性ジャーナリスト、マチルドとの交流の中で明かされてゆく。
派手なアクションシーンがあるわけではない
だが緊迫した場面の連続で気が抜けない。
そして複雑な中東の歴史のなかで翻弄された女性たちが、いつまでも被害者であり続けるのではなく、戦士として立ち上がる力強さに圧倒される。
なかでも女たちのISからの逃避行には戦慄させられた。
「人生で最も重要な30メートル」には息をのむ。
そして辿りついたとたんの出産シーン。
生きるとは、かくも過酷で壮絶なのだという思いで、胸がいっぱいになってしまった。
絶望ばかりが支配する映画だが、最後にわずかに訪れる希望に、観ているこちらも救われた。
バハールのモデルとなっているのが、2018年にノーベル平和賞を受賞したナディア・ムラド。
そしてフランス人ジャーナリストのマチルドは、隻眼のジャーナリストとして知られたメリー・コルヴィンがモデル。
彼女の伝記映画「ア・プライベート・ウォー」が、この映画と同時期に作られている。
そちらも併せて観てみたい。


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