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風に吹かれて

My Life & My Favorite things

Category: 外国映画

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映画「ラッキー」

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世界的に高齢化社会が拡がりつつある今、高齢者問題を扱った映画は数多いが、主人公が90歳の老人となると、これはもうかなり稀な映画となる。
演じるのはハリー・ディー・スタントン。
彼が彼自身を思わせるような老人を演じている。
実際この映画は彼のために作られた映画であり、スタントン自身の実体験に基づいたセリフやエピソードが随所に散りばめられている。
なかでも終盤に語られる沖縄での戦争体験は、そのままスタントン自身が体験したことであり、これが物語の重要なキーポイントになっている。

主人公のラッキーは90歳の老人である。
これまで結婚したことがなく家族はいない。
朝起きると、まずはタバコをふかしてコーヒーを飲む。
ヨガで体をほぐし、身体を丁寧にぬぐい、身支度をすると町へ出かける。
そして馴染のダイナーへ行くと甘めのコーヒーをたのみ、クロスワードパズルに熱中する。
合間に店主と無駄話に耽る。
頑固で憎まれ口をたたくが、人々に愛されていることがよく分かる。
そして日が暮れるとバーでブラッディ・マリアを飲みながら馴染みの客たちと過ごす。
そうしたラッキーの判で押したような生活が繰り返し描かれる。
これといった事件が起きるわけではない。
そんなところから昨年観た映画「パターソン」を思い出した。
パターソンは30代の青年だったが、ラッキーは90歳の老人。
パターソンは詩を書くのが趣味だったが、ラッキーはクロスワードパズルとテレビのクイズ番組を見るのが趣味。
そしてそれが重要な小道具として使われているのも共通するところ。
またこうした波風のたたない静かな生活に満ち足りているのも同じ。
さらにマイノリティに偏見を持たず親しくしているところも同じである。
そんな共通点からの連想であった。

ある日ラッキーはめまいを起こして倒れてしまう。
病院で診察を受けるが、悪いところは見つからない。
だがそこから死について考えざるをえない日々が始まった。
死は決して遠くないもの、差し迫った現実としてラッキーの前にその姿を大きく晒す。
平穏な日常は突如変わり、惑いと不安の中でラッキーが行き着いたのが「nothing」という言葉。
そしてその「nothing」に対してとるべきことは、ただ「微笑む」だけ。
そんな心境に至るまでが、様々な友人たちとの何気ない会話やエピソードのなかで描かれていく。

そして自分自身を演じたようなこの飄々とした映画を最後に、ハリー・ディーン・スタントンは2017年9月に91歳の生涯を閉じた。
羨むべき幕引き、なんと素晴らしい人生であることか。
表に出ることのない長い脇役人生の末の、生涯2本目となる主演作が最後の映画であったということは、いかにもハリー・ディーン・スタントンらしい。
老後を生きる身としては勇気づけられ、そして学ぶべきところの多い映画だった。


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Author:cooldaddy
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年齢:今年(2018年)70歳です。
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還暦(10年前)という節目を迎え、何か新しいことを始めようとブログを開設しました。
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