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風に吹かれて

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Category: 読書

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藤岡陽子「海とジイ」

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図書館で何気なく借りた本だが、読み進むうちに小説の舞台になっているのが、故郷である香川県多度津町の佐柳島と高見島であることが分かった。
それでこの小説が急に身近なものに感じられるようになったのである。

物語は「海神(わだつみ)」、「夕凪」、「波光」の3篇からなる連作短編で、老い先短い3人の老人の姿を描いている。
そしてそれぞれの老人のもとに生き方に迷うひ孫、看護師、孫が訪れ、老人と触れ合うなかで生きる力を得るというもの。
話自体はそれほど特別なものではなく、よくある話といえばそうなのだが、語りのうまさと瀬戸内海の小島が舞台という着想の面白さで読ませる。
しかもそれが自分の故郷となればなおさらである。
いやが上にも興味をそそられた。

佐柳島、高見島は同じ多度津町ではあるが、離れ小島なのでそれほど馴染があるわけではない。
ただ子供の頃に何回か父に連れられて訪れたことはある。
電気店を営んでいた父は、電気製品を納めたり電気工事をするためによく行き来していた。
そのため島には知り合いが多く、小学生の時には家族揃って島を訪れ、知人の家に宿泊、休日を過ごしたことがあった。
そして朝早くに沖合まで船を出し、釣りを楽しんだ。
また父親の後を継いだ弟が、父同様に仕事で行き来をしており、そうした縁が今も続いている。

そこで小説の舞台になった佐柳島、高見島のことをあらためて調べてみることにした。

佐柳島は面積1.83平方キロメートル、周囲6.6km。
2017年時点での人口は80人弱。
南部に本浦、北部に長崎というふたつの集落があり、いずれの集落も「埋め墓」と「参り墓」と呼ばれる特殊な埋葬制度が残っている。
そのことについて小説では次のように書いている。

<死んだ人の魂を埋葬する詣り墓と、肉体を埋葬する埋め墓。なぜ魂と肉体を別々に埋葬するようになったのかは、いまだはっきりとはわからない。
「昔から海の仕事をする男が多かったから、亡くなってもご遺体が戻らんことがしょっちゅうじゃったんじゃ。だから詣り墓ができたんかもしれんがのう」>

この制度は子供のとき、何かの折に聞いたことがあり、神秘的な印象をもったことがあった。
小説ではこの両墓制が物語のひとつのキーワードになっている。
また山の上には「大天狗神社」という古い神社があるが、この神社が小学生のひ孫がいじめから立ち直るきっかけとなるものとして効果的に使われている。

次は高見島について。
高見島は、面積2.35平方キロメートル、周囲6.4km、島全体が山になっているため、急斜面に石を積んだところに家が建つという集落になっており、それが独特の景観を作り出している。
江戸時代には北前船の寄港地として、さらには金毘羅参詣に訪れる人で賑わう港であった。
またかつては蚊取り線香の原料となる除虫菊の栽培が盛んに行われていたが、今は30人ほどが暮らすだけの島である。
こちらも佐柳島同様の両墓制が残っている。

1956年(昭和31年)、それまで村であった両島は多度津町に編入されて今日に至っている。
また両島とも今は多くの猫が住む「猫の島」として知られており、それを目当てに猫好きの観光客が訪れるようになったということだ。


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さらにもうひとつエピソードをつけ加えると、1962年に佐柳島を舞台にした映画が作られている。
東映映画の「あの空の果てに星はまたたく」という映画である。
丘さとみ、水木襄主演の青春映画で、脚本が新藤兼人、監督が関川秀雄、その映画のロケが佐柳島をメインに、多度津町内各所で行われたのである。
当時小学生だった私は、身近で映画のロケが行われるということを知り、大いに興奮したことを思い出す。
ただロケ風景を見学することは叶わなかったが、俳優たちが近くの旅館に泊まっていたことから、出演者たちの姿をほんの少しだけ垣間見ることができた。
それでも当時の田舎の少年にとっては、大いに胸躍らせる事件であったのだ。

またついでに書くと、高見島は「男はつらいよ 寅次郎の縁談」(1993年)や「機関車先生」(2004年)のロケ地でもある。
だがその時はもうすでに多度津を離れていたので、それらについての記憶はない。

といったことで、小説を読んでいるうちに、そんないろいろなことを懐かしく思い出したのである。


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