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風に吹かれて

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Category: 外国映画

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映画「シェイプ・オブ・ウォーター Shape of Water」

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昨年度のアカデミー賞で13部門でノミネート、作品賞、監督賞、音楽賞、美術賞の4部門で最優秀賞を獲得した話題の映画である。
それが新作レンタルで登場、さっそく借りてきた。

米ソ冷戦時代のアメリカを舞台に、主人公イライザと半魚人の恋を描いたファンタジーである。
いわゆる異類婚姻譚の一種であるが、こうした話は神話や説話によって昔から語られてきた物語である。
映画でいえば「キングコング」や「美女と野獣」などがそれにあたる。
それらの映画では怪獣たちが人間の女性に魅せられるが、この映画では女性の側から怪獣に惹かれていく。
そこが大きく違うが、それは主人公イライザが幼い頃のトラウマがもとで声を出すことができないという設定に基づいている。
孤独な魂がもうひとつの孤独と出会って心を通わせる。
囚われて自由を奪われた半魚人に惹かれていくのは当然というわけだ。
外見の異様さは彼女にとって障害とはならない。
それをたやすく飛び越える資質を彼女は持っている。
それは彼女の生活を見れば一目瞭然。
親友であるアパートの隣人ジャイルズはゲイの老画家、また同僚で友人の掃除婦ゼルダは黒人の女性と、いずれも社会の片隅で生きるマイノリティである。
そして彼女自身は言葉が話せない。
半魚人はけっして遠い存在ではない。
恐怖の対象とは見ていない。
まるで子犬に近づくような優しさで半魚人と触れ合おうとする。
何と純粋で無垢で愛らしい姿であろうか。
その好奇心に満ちた眼差しを見ていると、昔観た映画「ミツバチのささやき」の純真無垢な少女の姿を思い出す。

そして物語の中盤、事態は一気に動き出し、米ソのスパイ合戦を絡ませた半魚人の救出劇で大いに楽しませてくれる。
またイライザの日常の描き方にも楽しみの要素が様々散りばめられている。
まず彼女が住むアパートは映画館の上にあるという設定である。
そこで上映されているのが史劇「砂漠の女王」。
そのストーリーが、この映画の物語ともリンクしている。
また隣人ジャイルズは古い映画が好きで、テレビで放映される昔の映画ばかり観ている。
その映画に合わせてふたりでタップを踏む場面が楽しい。
そしてそれがイライザと半魚人がダンスを踊る幻想シーンへと繋がっていく。
SFがあり、ホラーがあり、活劇がある。
さらにそこにミュージカルまでが加わるという、まるでオモチャ箱をひっくり返したような賑やかさ。
そうしたすべてが混乱することなく、イライザと半魚人のロマンスをしっかりと支えているのである。
映画好きには堪らないシーンが満載である。

監督はメキシコ出身のギレルモ・デル・トロ。
特殊メイクから映画の世界に入ったという変わり種。
少年時代に日本のアニメやマンガ、特撮映画に夢中になり、その影響を大きく受けたという。
いわゆりオタク精神の持ち主である。
そんな少年時代にテレビで映画「大アマゾンの半魚人」を観た。
映画では「半魚人は探検隊の女性に恋するけど、殺されてしまう。」
だが「半魚人があまりに可哀そうで、僕は、半魚人が彼女と仲良くデートする絵を描いた。それからずっと2人を幸せにしたいと思い続けて、40年以上かけて夢をかなえたんだ」
古い革袋に新しい酒を入れたというわけである。
そうやって生み出された「シェイプ・オブ・ウォーター」の半魚人は、異形の姿をしているが、人間に危害を加える怪物ではなく、柔らかな心を持った存在として描かれる。
そしてそこに自らを含めたマイノリティたちの怒りや悲しみを付与することで、確かな今日性を獲得しているのである。
さらに言えば、囚われ虐待され傷ついた半魚人の姿には、殉教者のイメージを重ねるて見ることもできる。
そうした読み解きができるのも、この映画がもつ豊かさである。

題名の「シェイプ・オブ・ウォーター」は日本語に訳すると「水の形」。
だが水に形などはない。
これについて監督は次のように語っている。
「愛と水には形はない。だがそれはどこへでも流れ込んでいける。そしてその入れ物に合わせて形を作る。愛と水はこの世で最も強い力なのだ。」
その言葉通り場所を変え、形を変えるたびに愛も水も変化していく。
その行きつく先が果たしてどんなものになるか、それは映画を観てのお楽しみ。
映画愛、モンスター愛に溢れたラブ・ロマンスを心ゆくまで堪能してほしい。


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テーマ : DVDで見た映画  ジャンル : 映画

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