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Category: 読書

Tags: エッセイ・評論  

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岡崎武志「気がついたらいつも本ばかり読んでいた」

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この本の表紙裏には、次のように書かれている。

<著者の20冊以上にのぼるスクラップブックから精選した各紙誌掲載の書評原稿やエッセイに加え、映画、音楽、演芸、旅、食、書店についてのコラム、イラスト、写真によるお愉しみ満載のヴァエティブック。>

そして「ヴァラエティブック」については「あとがき」で、次のように書いている。

<「ヴァラエティブック」というのは、一九七一年に晶文社から出た植草甚一『ワンダー植草・甚一ランド』をその嚆矢とする、書籍のスタイルを指す。
通常、一段、および二段組で、テキストを流し込むところを、一段、二段、三段、四段と違う組み方で、評論、エッセイ、コラム、対談あるいはビジュアルページを雑多に編集、構成。まるで雑誌みたいな単行本のことで、小林信彦、双葉十三郎、筒井康隆などが、晶文社で同様のスタイルの本を出していた。七〇年代に本読みとして青春を送った我々は、この自由な本の作り方に憧れ、大いに感化されたのである。>

晶文社、そして植草甚一とくると、われわれ世代の人間にとっては、ことさら馴染み深い。
この本をはじめ晶文社の本には、70年代のサブカルチャーの水先案内といったような本が多く、その隆盛に大きな役割を果たした。
私もそうした一連の書籍から様々な影響を受け、未だに自分の中に深く根を下ろしているのを感じている。
それは著者の岡崎武志が「大いに感化された」のと同様だ。
さらに加えて晶文社の創業者が、明治大学の教授、小野二郎先生ということも、それを特別なものにしている。
直接教わったわけではないが、隣のクラスにいた家内は小野先生の授業を受けており、また他の友人たちからもそのユニークな授業内容や、小野先生の人となりをよく聞かされていた。
そうした名物教授が晶文社の創業者ということで、晶文社の本は特別輝いて見える存在であったのだ。
この本はそんな流れを汲んでおり、70年代の匂いをそこはかとなく身に纏っている。
それがこちらのアンテナに引っかかり、手に取ることになったわけである。

岡崎武志の本を読むのは「上京する文学」に続いて、これが2冊目。
「上京する文学」も面白かったが、こちらも負けずに面白い。
それは岡崎武志の書く内容や関心の持ち方などが、私の趣味嗜好と合致する部分が多いからで、また年齢が近いということも大きいのかもしれない。
同じ時代を生き、そのなかで似たような感性を育んだということか。
とにかくこの本を読んでいると、共感する部分が多い。
またコアな情報も多く、そうしたものを見つけると、ひとりほくそ笑んでしまう。
たとえば、いちばん最初に出てくる書評「とにかく生きてゐてみようと考え始める」のなかでは「森崎書店の日々」という映画のことが書いてあり、その映画の「1シーンに出演している。」と書いている。
地味な映画で、あまり採り上げられることのない映画だが、神田神保町の古本屋街が舞台になっていることから、古書マニアの著者にお呼びがかかったのだろう。
もうそれだけで、嬉しくなり、この本に親しみが沸くのである。
また著者が10数年書き続けているブログから採録した「今日までそして明日から」という章では、「タブレット純」についてのコラムが出てくる。
そこには「出てくる時は出てくるもんである。新しい才能が。」という書き出しで、次のように書いている。
<その時、脇に座ってニコニコ笑っていたのが、驚異のレコードコレクターで歌手として登場していたタブレット純というタレント。ボクは初めて見たが、「何とな!」と叫びたくなる、異端の存在であった。ちょっと、話題が飛び出すと、まあ、次から次へと、超希少なレコードが、テーブルの下から出てくる出てくる。すべて自分のコレクションだという。すごいものを見た、という印象である。
 しかもタブレット純は、この手の蒐集家にありがちな、鼻をふくらませて「どうだ!」と言いたげな風情がまったくなく、持ってきたレコードも、申し訳なさそうに出す。ビジュアルはGS時代を思わせる金髪長髪、喋りはオネエ系である(あとで、本当にそうだと知る。)アルフィーの高見沢と二人並ぶ姿を想像すると、目が眩む。出てくる音楽の小ネタも情報として正確で、見飽きない。今後が楽しみな逸材、だと認識したのだった。>
実は私も以前からタブレット純のことは注目して見ていたので、これを読んでわが意を得たりとまた嬉しくなってしまったのである。
まさに「見ている人は、見ているもんである。」

この他にも「ダンテ」、「こけし屋」、「ファンキー」、「いもや」といった昔懐かしい名前の店が出てきたのも嬉しいことのひとつ。
「ダンテ」と「こけし屋」は、40数年前、西荻窪に住んでいた頃に、よく通った店である。
とくに「ダンテ」は、知り合う前の家内が毎日のように通っていた店で、家内と知り合ったとき、最初に連れていかれたのがこの喫茶店であった。
10坪にも満たない小さな店で、ジャズ喫茶というわけではないが、いつも静かにジャズが流れていた。
そして美味しいコーヒーを飲ませてくれる。
隠れた名店である。
いっぽう「こけし屋」は「ダンテ」のような小さな店ではなく、3階まである洋菓子兼レストランである。
創業昭和24年の老舗で、近隣の文化人たちが足繁く訪れた店である。
よく知られたところでは、浜田山に住んでいた松本清張がしばしば来店、食事の後はここで小説を執筆していたこともあったそうだ。
また井伏鱒二、丹羽文雄、金田一京助、棟方志功、東郷青児、徳川夢声、開高健などが集う会がこの店にあった。
そんな文化の匂いを今も残しており、本書ではここで「西荻ブックマーク」のトークショーが開かれたと書かれている。
こうした店が「中央線文化」の一翼を担っているのである。
両店とも西荻窪の駅前にあり、今も昔と変わらず健在なのが頼もしい。

「ファンキー」は吉祥寺駅前にあるジャズ喫茶、そして「いもや」は神保町にある天ぷらの店。
どちらも昔通った馴染の店だが、とくに「いもや」は安くてうまい天ぷらを出す店で、貧乏学生にとってはありがたい店であった。
「八人で満員ぐらいの小ぶりの店」で、行くと必ず長い行列に並んだものだ。

このほかにも旅や街歩きのさまざまな記述があり、情報満載。
なかでも古書店についての情報は詳細を極めている。
東京に限らず各地の古本屋を巡り、行く先々で珍本、希少本を探す。
また古本に限らず、古書店主やスタッフなどにも顔なじみが多く、そのため業界の裏話にも深く通じている。
古本や古書店についての著書を、数多く出している著者ならではの世界である。

このように盛りだくさんの内容に、時間を忘れて読み耽った。
どこを開いても興味深く、どこから読んでも面白い。
また著者自身が描いた和田誠風のイラストや写真も彩りを添えており、それを眺めるのも愉しい。
だからこそ「ヴァラエティブック」なのである。


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テーマ : 図書館で借りた本  ジャンル : 本・雑誌

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年齢:今年(2018年)70歳です。
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