風に吹かれて

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Category: 読書

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小池真理子「存在の美しい哀しみ」

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先日の「沈黙のひと」に続く小池真理子の小説。
こちらも家族がテーマで、東京、プラハ、ウィーンを舞台に描かれる。
登場するのは後藤家と芹沢家というふたつの家族。
後藤家の妻・奈緒子は、以前の嫁ぎ先である芹沢家に、生まれたばかりの息子を置いたまま離婚をしたという過去を持っている。
そして後藤信彦と再婚、娘の榛名が生まれた。
奈緒子は、癌で55歳で亡くなるが、その直前に娘の榛名に異父兄がいることを告げる。
榛名は奈緒子の死後、チェロの修行のためプラハに住んでいるという異父兄・聡に会いに行く。
妹だという事実を隠したままで。
その経緯を書いたのが、第一章の「プラハ逍遥」である。
最初は短編として書かれたもので、その後6編の連作短編を加えて出来たのがこの小説である。

小説の題名を見てまず最初に思ったのが、映画「存在の耐えられない軽さ」であった。
ミラン・クンデラの小説を映画化した作品で、プラハの春を題材にした映画である。
主演はダニエル・デイ・ルイスとジュリエット・ビノシュ。
この映画のことが「プラハ逍遥」で、話題として出てくるので、題名はそれにちなんで付けられたものだということが分かる。
ちなみにこの小説には、この他にもいくつかの映画が登場する。
第二章「天空のアンナ」では「アンナ・カレーニナ」、最終章「残照のウィーン」では「ビフォア・サンライズ」と「第三の男」。
いずれも物語の効果的な素材として使われている。
なかでも最終章では、「第三の男」で、オーソン・ウェルズとジョセフ・コットンが出会う場面で有名なプラターの大観覧車が小説の舞台として使われており、クライマックスの劇的効果を上げる役割を担っている。
映画で見知ったお馴染みの場所だけに、情景がすぐに浮かんでくる。
小説では、この他にも聡の妹・恵理が映画関係の会社に勤めるなど、映画関連の話題が多い。
そうしたことが、小説の面白さを支える、大きな要素になっている。
著者・小池真理子は、おそらくかなりの映画好きに違いない。
そう考えると、同じ映画フリークとして急に親近感を覚えることになる。
この小説が印象に残ったのは、そうしたことも理由のひとつである。


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