風に吹かれて

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Category: 日本映画

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映画「オーバー・フェンス」

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偶然だが最近、北海道を舞台にした映画を観ることが重なった。
先日観た『起終点駅ターミナル』『愛を積む人』そしてこの映画である。
『起終点駅ターミナル』は釧路、『愛を積む人』は美瑛、そして『オーバー・フェンス』は函館が舞台になっている。

『オーバー・フェンス』は『海炭市叙景』『そこのみにて光輝く』に続く佐藤泰志原作の映画化作品である。
いずれも函館が舞台で、函館三部作と呼ばれているが、監督である山下敦弘、熊切和嘉、呉美保の全員が大阪芸術大学芸術学部映像学科の中島貞夫ゼミの出身者である。
さらに同大学出身の近藤龍人がすべての撮影を担当している。
そうした共通点があり、いずれ劣らぬ秀作ぞろいではあるが、好みからいえば今回の『オーバー・フェンス』がいちばん印象に残った。

結婚に失敗し、傷心のまま故郷函館に帰郷した主人公の白岩(オダギリ・ジョー)は、職業訓練学校に通いながら次の一歩を模索する日々である。
しかしあまり積極的とは言えず、実家にも寄りつかず、アパートでひっそりとひとり過ごす毎日である。
そんななか風変わりでエキセントリックなホステス・聡(蒼井優)と知り合い、その予測不能で突飛な行動に振り回されるが、それがきっかけで白岩の鬱屈した心に変化が生まれる。
そうした日々が函館の街を背景に描かれるが、そのゆったりとしたリズムが心地いい。
人生を半ば諦めたような男が主人公ということで、ひたすら暗いが、そんな暗さとは無縁に街の風景は明るく静かである。
その街を主人公が移動するのが自転車というのは、この映画にはよく似合っている。
スピードを出すのではなく、ただひたすらゆっくりと進んでいく。
また白岩が通う職業訓練学校の同じ建築クラスの生徒たちも、いずれも人生のやり直しを目ざしながらも、特別肩ひじを張って頑張っているというわけではない。
むしろダラダラとやる気のなさばかりが目立つ。
趣味で通っていると思われる定年退職者(鈴木常吉)、元ヤクザ者(北村有起哉)、大学の中途退学者(満島真之介)、元営業マン(松田翔太)、今どきの若者(松澤匠)と、いずれもひと癖ありそうな輩ばかりである。
ダメ人間を描かせたら天下一品の山下敦弘監督の腕が、ここで冴えわたる。
そうした男たちを見るだけでも、この映画を観る価値がある。
そして主役のオダギリ・ジョー。
中途半端に生きる彼の所在無げな姿がいい。
人と距離を置こうとするごまかし笑い、聡を見つめる優しい笑い、そうしたいろんな笑いが自然でいい絵になっている。
そして訪ねてきた元妻(優香)と会った後の号泣。
オダギリジョーは「ゆれる」での泣きもよかったが、この映画での泣きもまたいい。
泣きの似合う俳優である。
「失うものは何もないから」が切なく胸に響く。
そしてこうした鬱屈を晴らすことになるクライマックスのソフトボール大会。
「オーバー・フェンス」の意味が最後に炸裂するシーンが爽やかだ。
これでまた山下敦弘監督の代表作に、新たなものがひとつが加わった。


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