風に吹かれて

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Category: 読書

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原田マハ「奇跡の人」

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何か面白い本はないかと、本屋で立ち読みしていたとき、たまたまこの本を手にしたところ、そこに「弘前」という地名があるのを見つけた。
どうやら「弘前」が舞台の話のようだ。
興味を引かれたのでじっくり読んでみようと、図書館へ行き借りてきた。

「奇跡の人」という題名からすぐに思いつくのは、ヘレンケラーの物語である。
聞こえず、見えず、話せずという三重苦を抱えたヘレンケラーが、アニー(アン)・サリバンによって言葉を理解するようになるという有名な話である。
昔映画で観て感動したことを憶えている。
ちょうど中学生くらいの時であったと思うが、クライマックスでは胸が熱くなり泣いてしまった。
映画を観て泣いたのは、これが初めてであった。
それだけに鮮やかな記憶として残っているのである。
ヘレンケラーを演じたのはパティ・デューク、アニー(アン)・サリバンを演じたのはアン・バンクラフト。
この映画でパティ・デュークはアカデミー助演女優賞を、アン・バンクラフトは主演女優賞を受賞している。

そしてこの小説である。
題名通りまさにこれは日本版ヘレンケラー物語である。
ヘレンケラーが介良(けら)れん、アニー(アン)・サリバンが去場安(さりばあん)となっており、明治20年の津軽を舞台に書かれている。
読み始めてすぐに同じ話だということが分かった。
それをなぞった話をまたもういちど読むのもどうかと思いながら読んでいたが、いつの間にかそんなことも忘れてしまい、夢中になってしまった。
そして気がつくとそのまま一気に最後まで読んでしまったのである。
原田マハの語りの上手さを、あらためて感じたのである。

明治4年、9歳の去場安は、岩倉使節団の留学生として渡米する。
彼女は生まれつき視力が弱く、いずれ目が見えなくなると医者から宣告されていた。
行く末を案じた父親は、ひとりで生きていける力を身につけさせようと、幼い彼女を留学させることに決めたのである。
そして16年の後、留学生活を終えた安が、女子教育に専心したいという希望を胸に帰国した。
その彼女のもとに伊藤博文から、青森県弘前町の男爵家の娘の教育係をやってもらえないかという依頼の手紙が届く。
それが三重苦の娘、介良(けら)れんであった。
情熱に燃える安は、その困難な仕事に挑もうと単身弘前へと赴く。
そしてけもののようなれんとの壮絶な試練の日々が始まるのである。

この物語と実際のヘレンケラーの物語との大きな違いは、津軽の盲目の旅芸人、狼野(おいの)キワという少女が登場することである。
手のつけられないきわは、座敷牢のような蔵に閉じ込められて生活をしていた。
そのきわを、蔵から出して大人しく生活できるようにするまでは、なんとかこぎ着けることができたが、きわのなかに眠る才能をもっと引き出したいと考える安は、それだけでは満足しない。
そこで環境を変えてさらなる飛躍を遂げようと、金木にある介良家の別邸にこもって、二人きりの生活を始める。
そこに「ボサマ」と呼ばれる門付け芸人の親子が、毎日のように門付けにやってくる。
その子供が10歳になるキワであった。
やがてキワはれんと親しくなる。
れんにとっては初めての友だちである。
そしてそのことが、れんの教育にとって大きな力になっていくのである。

アウトラインはヘレンケラーの物語をなぞっているが、細部は作者独自の工夫がされており、同じ話を読んでいるようには感じない。
まったく別な物語としての面白さがある。
とくにキワが登場して以降の話にとくにその感が強い。
ボサマやイタコ、川倉地蔵や「賽の河原」、そしてキワが歌う民謡や津軽三味線、そうした津軽独特の風土や風習が揃うことで、話に厚みが加わってくる。
また津軽弁が間違うことなく正確に書かれていることも、リアルさをさらに高める要因になっている。
そのことは地元の人間として感心したが、本の協力者に「九戸真樹」という名前があるのを見て納得した。
津軽の文化人で、地元発行の雑誌などにもしばしば文章を書いている人である。
その人が協力者となって名前を連ねている。
津軽に関する水先案内人になっている。
なるほど津軽弁を始めとした津軽のあれこれが、詳細かつ正確に書かれているのは、そのためである。
そうしたこともあって、よりいっそう印象深い一冊になったのである。


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