映画「柘榴坂の仇討」

桜田門外の変に関わった、襲った側と襲われた側の武士ふたり。
その後の13年間を描いた映画である。
この13年は、幕末から明治となった激動の時代。
すべての価値観が大きく変わった時代である。
しかし主人公ふたりの時間は、桜田門外の変の時で止まったままである。
時代に翻弄された彼らは、どちらも時代に見捨てられ孤独の中で生きている。
敵同士ではあるが、ふたりは合わせ鏡のように似た者同士であることが見えてくる。
そうしたふたつの孤独な魂が、まるでお互いが片割れを捜し求めていたかのように巡り合うことになる。
そしてクライマックスの対決となる。
中井貴一、阿部寛が素晴らしい。
今は車夫となった阿部寛が雪の降る夜道のなか、中井貴一を乗せた車を曳いてゆく。
その道中で交わされる問わず語りの会話は、闘いの前哨戦ともいえるもの。
ふたりの争いはすでに始まっている。
緊迫感溢れるその一語一語を、聴き洩らさないように神経を集中させてゆく。
ふたりと同調するように、こちらの緊張感も高まってゆく。
そしてついにふたりの死力を尽くした真剣勝負のときがやってくる。
静と動との鮮やかな転換、そして桜田門外の変と同じく雪のなかで繰り広げられる迫力ある殺陣、見応えじゅうぶんである。
久しぶりに本格的な時代劇を堪能した。
原作は浅田次郎による短編集『五郎治殿御始末』。
この本は読んだ憶えがあるが、残念ながら内容については、あまりよく憶えていない。
原作になった短編だけでも、もういちど読んでみようかなと思っている。


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