風に吹かれて

My Life & My Favorite things

Category: 読書

Comment (0)  Trackback (0)

島田雅彦「ニッチを探して」

niche.jpg

ニッチ(Niche)とは「隙間」や「くぼみ」のこと。
もともとは古代ローマ時代の建築で造られた、花瓶や彫刻などを置くためのくぼみのことであったが、現在ではビジネス用語として使われることが多い。
また生物の「生息域」という意味でも使われることがあり、そのことについて小説では次のように書いている。

<地球上には生物の多様な生息環境があり、それぞれの生息に適した場所を占める。その場所もしくは条件を「ニッチ」と呼ぶ。草原、山林、砂漠、海、地中、空などの諸環境の違いはもとより、寒冷地を好むか、熱帯を好むかの気象帯の違い、昼行性か、夜行性かの行動時間帯の違いによって、生物は棲み分けを行っている。>
そして
<生物界に起きることは人にも当てはまるし、多くの都市でも見られる。都市生活者たちは誰しも自分に適ったニッチを見出し、ハッピーに暮らしたがっているが、誰もが似たような欲望を追求し、同じような生活スタイルを求めるので、競争が激しい。しかし、多少好みをずらせば、まだまだ空きニッチはある。元のニッチを追い出された人も、新たなニッチに潜り込み、別種の生き物に変わり得る。たとえば、環境の変化や排除を受けた者は、移住したり、転職したり、出家したり、ドロップアウトしたり、リセットしたりして、別のニッチに進出しようとする。>

こうした前説の後、物語は始まる。

主人公は某銀行で副支店長をしている藤原道長。
彼がある日突然何の前触れもなく、家族や人々の前から姿を消してしまう。
銀行内で行われている不正融資にからんで、彼に容疑がかけられたことから、身を隠す必要に迫られたからだ。
そこから警察や銀行から逃れながらのホームレス生活が始まることになる。
そしてホームレス初心者の彼が、どのようにして自分なりの「ニッチ」を見い出していくかが描かれるのである。
そのプロセスには、路上生活の手引書といってもいいほどの詳しいノウハウが書かれている。
ひょっとすると作者自身が、こうした生活を実際に体験したのではと思えるほどリアルである。
同時にそこには路上生活者の視点から見た、東京という街の新たな魅力が蘊蓄を交えながら紹介されている。
そうした「ニッチ」探しにつき合うことで、主人公といっしょに様々なことを学んでいくことになる。
謂わば一種の街歩きの書でもある。

これを読みながら思い出したのは、子供の頃、夢中になって読んだロビンソンクルーソーの物語である。
知恵と勇気を振り絞り、無人島生活を生き延びていったロビンソンクルーソーの姿に重なるものを見たのである。
そしてその時に味わったのと同じようなスリルと面白さを、この小説でも味わったのである。
現代のロビンソンクルーソーは無人島ではなく、都市生活のなかで生きている。

ちなみにこの小説も、先日読んだ川本三郎の「物語の向こうに時代が見える」で知った小説である。


にほんブログ村 本ブログへ 
↑ クリック、お願いします。 ↑

スポンサーサイト

Newer Entry映画「起終点駅 ターミナル」 Older Entry桜の剪定枝の配布
Comments






カレンダー
08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
プロフィール

cooldaddy

Author:cooldaddy
住んでいるところ:青森県弘前市
出身地:香川県
年齢:今年(2008年)還暦です。
性別:男

還暦という節目を迎え、何か新しいことを始めようとブログを開設しました。
趣味のこと、生活のこと、心に残ったことなど、My Favorite thingsを、気ままに書いていこうと思います。
末永くおつき合いください。

映画サイト「マイ・シネマ館」もやっています。
こちらもよろしく。

ランキングサイトに参加しています。
もしよければクリック、お願いします。↓
ブログランキング・にほんブログ村へ 

cooldaddyの本棚
FC2ブログランキング
ブログ内検索
QRコード
QRコード

12345678910111213141516171819202122232425262728293009 2017