風に吹かれて

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Category: 読書

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高橋弘希「指の骨」

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三十代の新鋭が書いた戦争文学ということで話題になった小説である。
著者の高橋弘希は1979年12月8日青森県十和田市生まれ。
2014年にこの小説で、第46回新潮新人賞を受賞。
また同作で第152回芥川賞候補、第28回三島賞候補となっている。

戦争文学といえば、ほとんどが戦争経験者の書いたものというのが通り相場だが、これは戦争をまったく知らない世代が書いた戦争文学。
そんな人間に果たして戦争が書けるのだろうかとの疑問が湧くが、考えてみれば小説というものは必ずしも本人が経験したものばかりが書かれるわけではない。
自分が経験したことのないものでも、綿密なリサーチを重ね、それを手がかりに想像力を働かせることでどんな世界でも書くことができる。
そう考えると、戦争と無縁の若い世代が書いたとしても不自然と云うことにはならない。
実際この小説を書くに当たって、作者はかなり綿密な下調べを行っていることが窺える。
そこから作り上げた戦争小説である。

時代は敗色濃い戦争末期、「赤道のやや下に浮かぶ、巨大な島。その島から南東に伸びる細長い半島」が舞台である。
戦場でケガを負った主人公が、ジャングルにある野戦病院に送り込まれる。
そこで過ごす日々が淡々と描かれていく。
華々しい戦闘場面などは出てこない。
しかしそこには常に死が身近にある。
薬品もなく、十分な治療も受けられず、兵士たちはつぎつぎとあっけなく死んでいく。
そして兵士が死ねば、衛生兵が現れて、遺骨として兵士の指を切り落としていく。
それがこの小説の題名の由来である。
明日は我が身といった悲惨な日常が続いていくが、しかしそんななかでも、ふと戦争や死を忘れてしまうような時間が訪れることもある。
そうした描写が抑えた筆致で書かれているだけに、戦争の現実が生々しいものとして迫ってくる。

この小説を読みながら思い出したのは、やはり大岡昇平の「野火」であった。
おそらく誰もがそれを連想するにちがいない。
そして作者もそれを意識しながら書いたのではなかろうか。
昨年、塚本晋也監督の映画「野火」と、市川崑監督の映画「野火」の両方を観たばかりで、その鮮烈な映像が記憶に残っていただけに、よりリアルなものとしてこの小説を読むことができた。


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