風に吹かれて

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Category: 読書

Tags: 短編小説集  

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宮本輝「いのちの姿」

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宮本輝のエッセイを読むのは、久しぶりのこと。
『二十歳の火影』や『命の器』を読んで以来だから、およそ30年ぶりということになる。
宮本輝は随筆の名手である。
これは『二十歳の火影』や『命の器』を読んだ時に感じた印象である。
まるで名短編を読んでいるような味わいがあった。
しかしあとがきで書いているように、彼はある時期からエッセイを書くことをやめている。
依頼があっても、ことごとく断っている。
小説を書くことに専念したいからというのが、その理由である。

ところが、2007年の春、懇意にしている京都の料亭の大女将と食事をしたとき、料亭でエッセイ誌を出すことにしたという話を打ち明けられた。
それは大女将の長年の夢であった。
そして半ば強制的に書くことを承諾させられたのである。
どうせ3号くらいで廃刊になるだろう、そう考えて軽く請け負ったが、結局7年間も続くことになった。
ところがそうやって書き続けているうちに、エッセイを書く楽しみを、また思い出したというのである。
それをまとめたのが、この本である。
やはり相変わらずうまい。

創刊からの14編が収められている。
どの短編も読ませるが、なかでも最初に登場する「兄」「星雲」「ガラスの向こう」がとくにいい。
「兄」は、彼の母親が最初の結婚をした時に生んだ異父兄と、ひょんなことから出会ったという話。
「星雲」はシルクロードを旅した時に泊まった、鄙びたホテルのたったひとりの従業員である十六、七歳の少女の話。
「ガラスの向こう」は子供の頃近所にあったお好み焼屋の生まれたばかりの子供を、ある事情から著者の父親が子供のいない豆腐屋の夫婦に、養子として斡旋したという話。

またこの他にも「パニック障害がもたらしたもの」というのがあるが、それは著者が25歳の時、突然得体のしれない精神性の疾患に襲われ、苦しむようになるが、それを契機に作家になる決意をしたという話である。
その経緯は以前読んだエッセイ集でも読んだことがあるが、それがまた形を変えてここでも書かれている。
さらにそのパニック障害がきっかけで出合うことになった興味深い話が、「人とのつながり」というエッセイになっている。

いずれも著者が出会った人生のある瞬間を丁寧に切り取った滋味あふれる話ばかり。
さまざまな経験を積んできた、著者ならではのものだ。
今回も以前読んだ時の印象と変わらず、名短編を読んでいるような気分にさせられたのである。


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