風に吹かれて

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Category: 外国映画

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映画「あの日の声を探して」

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1999年に起きた第二次チェチェン紛争を舞台に描いた悲劇である。
それを両親を殺戮された少年と、強制的に軍隊に入隊させられた若いロシア兵、そして少年を保護するEU職員という3つの視点から描くことで、紛争の絶望的な状況を浮かび上がらせる。
その過酷な現実には、思わず目を背けたくなってしまう。
しかしそれでいてけっして画面から目を離すことはできない。
映像が持つ力である。
そして両親を殺戮されたショックで声を失った少年と同じように、言葉を失い少年の絶望的な逃避行を息をつめて見守ることになる。

さらにもうひとつの視点、ロシア人の青年が強制的に入隊させられた軍隊のなかで陰湿な虐待を受けながら、次第に人間性を失っていく姿を見せられる。
スタンリー・キュブリックの「フルメタル・ジャケット」を思わせるような軍隊の狂気である。
そうした現実の前では、どんな言葉も無力だということを感じてしまう。
そこは力だけが支配する有無を言わせぬ世界である。
また常に死と隣り合わせとなった世界でもある。
そうした異常さのなかから殺戮兵器としての兵士がつぎつぎと生み出されていくことになる。

そんなふたつの厳しい現実を突きつけられることで、戦争の不条理さや、人間が抱え持つどうしようもない残虐性が激しく炙り出されていく。
そしてこのような極限状況のなか、人はどのように行動し生きていけばいいのか、深く考えさせられることになるのである。

監督は2011年に「アーチスト」でアカデミー賞5部門を獲得したミシェル・アザナヴィシウス。
エンターテインメント性たっぷりの「アーチスト」から一転、今回はシリアスな人間ドラマである。
これは彼がどうしても描きたいと願い続けた作品なのだという。
おそらくそれは彼がリトアニア系ユダヤ人家庭で育ったことと無縁ではあるまい。
そう考えるとこれは歴史の大きなうねりの中で、撮るべくして撮られた映画ということになるのかもしれない。
こうした悲劇は、これからも連綿と続いていくのだということを示唆しているようにも思える。
映画の中で全く無関係のように思われていたふたつのドラマが、最後に交差するのを見ていると、なおさらそう思えてならない。
だがそんな絶望のなかでも少年が声を取り戻し、最後に笑顔を見せることで、そこに残されたわずかな希望や人間の優しさを見ることができるのである。


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