風に吹かれて

My Life & My Favorite things

Category: 読書

Tags: 短編小説集  

Comment (0)  Trackback (0)

ジャック・ロンドン「火を熾す」

hiwookosu.jpg

この小説を知ったのは、村上春樹の小説「神の子はみな踊る」のなかの短編「アイロンのある風景」を読んだから。
「アイロンのある風景」は、焚き火を通して知り合った中年男と若い女性が、海岸で焚火をしながらとりとめのない話をするというもので、そのなかで彼女が高校の夏休みに読書感想文の課題として読んだジャック・ロンドンの「火を熾す」という小説のことを思い出す。
そしてその感想文に「主人公は本当は死を求めていた」と書いたことから、教師にバカにされたと言うのである。
それを読んでこの小説のことが強く心に残った。

またこの短編を読んでほどなくして、たまたま聴いていたラジオから、ジャック・ロンドンの「火を熾す」についての話が聞こえてきた。
それは作家小川洋子が出演する「メロディアス・ライブラリー」という番組であった。
そのなかで採り上げられていたのがこの小説であった。
この不思議な偶然に、あらためて読んでみなければと思ったのである。
この経緯は、まるで先日読んだ村上春樹の「東京奇譚集」で書かれていたような偶然であった。

ジャック・ロンドンは生涯に200以上の短編を書いたそうだが、そのなかから翻訳者・柴田元幸が選んだ9篇を収めたのがこの短編集である。
ジャック・ロンドンは1876年に、サンフランシスコの貧しい家庭に生まれている。
小学校は卒業したものの、貧困の為に進学できず、缶詰工場で働き始める。
さらに漁船の乗組員になったり、ゴールドラッシュにわくカナダ北西部に金鉱を探す旅に出かけたりと、様々な職業を転々としている。
またホーボー(鉄道放浪者)となって、各地を放浪するという生活も経験している。
その時には浮浪罪で逮捕され、30日間の労役を科せられている。
そうした波乱に富んだ生活を送った後、独学で小説を書き始め、1903年に出版された『野性の呼び声』によって、一躍流行作家となったのである。
これらの短編は、そんな生活体験の中から生み出されたものである。

表題作の「火を熾す」はアラスカのユーコン川が舞台になっている。
雪で覆われた極寒の大地のなか、仲間のいる場所を目指してひとりの男が歩いている。
その後を見知らぬ犬がついていく。
そして男は道に迷い、次第に死の影が迫ってくるなか、生き抜くために火を熾そうとするがなかなか火はつかない。
果たして男と犬の運命はどうなるのか、というのがこの小説のストーリーである。

こうした極限状態が、抑えた筆致で簡潔に書かれており、力強い迫力で迫ってくる。
そこにあるのは、生と死を分ける厳しい現実だけ。
軟な情緒の入り込む余地はない。
波乱に富んだ人生を歩んできたジャック・ロンドンならではの力強さに満ちている。
この他の短編も同様である。
これと同じく極寒の大地を舞台にした「生への執着」、ボクシングものの「メキシコ人」や「一枚のステーキ」、こうした物語を読んでいると、人生は闘いの連続だとの認識を新たにすることになる。
そしてその闘いのなかで感じる恐怖や希望や絶望が、切実で身近なものとして迫ってくる。

そんな力強い小説を書いたジャック・ロンドンであるが、1916年に40歳の若さで自殺をしている。
そうした人生や作品を考え合わせると、ヘミングウェイとの共通性が感じられてならない。

今年は没後100年にあたる年。
その節目にこうした作品群を味わえたことは非常な歓びである。
機会があれば、いつか他の作品も読んでみたいと思っている。


にほんブログ村 本ブログへ 
↑ クリック、お願いします。 ↑
スポンサーサイト
テーマ : 図書館で借りた本  ジャンル : 本・雑誌

Newer Entry映画「あの日の声を探して」 Older Entry映画「海街diary」
Comments






カレンダー
04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
プロフィール

cooldaddy

Author:cooldaddy
住んでいるところ:青森県弘前市
出身地:香川県
年齢:今年(2008年)還暦です。
性別:男

還暦という節目を迎え、何か新しいことを始めようとブログを開設しました。
趣味のこと、生活のこと、心に残ったことなど、My Favorite thingsを、気ままに書いていこうと思います。
末永くおつき合いください。

映画サイト「マイ・シネマ館」もやっています。
こちらもよろしく。

ランキングサイトに参加しています。
もしよければクリック、お願いします。↓
ブログランキング・にほんブログ村へ 

cooldaddyの本棚
FC2ブログランキング
ブログ内検索
QRコード
QRコード

1234567891011121314151617181920212223242526272829303105 2017