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Category: 読書

Tags: 村上春樹  短編小説集  

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村上春樹「TVピープル」

tv-people.jpg

「TVピープル」、「飛行機―あるいは彼はいかにして詩を読むようにひとりごとを言ったか」、「我らの時代のフォークロア―高度資本主義前史」、「加納クレタ」、「ゾンビ」、「眠り」の6篇が収録された短編集である。
これらの短編は、すべてヨーロッパ滞在中に書かれたものである。
当時は『ノルウェイの森』と『ダンス・ダンス・ダンス』がベストセラーとなった時期である。
ところがそれが予想もしなかったような売れ方をしたことから、精神的に落ち込み、まったく小説が書けない状態に陥っていた。
そうした状態が1年近く続いた後、滞在先のローマ市内のアパートで突然閃いて書いたのが、「TVピープル」である。
村上春樹にとっては大きな転機となった作品ということになる。
そしてこれらの短編を書いた後に、3年近く滞在したヨーロッパから帰国することになった。
1990年1月のことである。
またこの作品は村上作品のなかでは初めて『ニューヨーカー』誌に掲載された作品であり、そうしたことからも彼にとっては忘れられない作品ということになる。
そのことについて彼は次のように述懐している。
「僕にとっては、おおげさに言えば、『月面を歩く』のと同じくらいすごいことだった。どんな文学賞をもらうよりも嬉しかった」

相変わらず村上春樹の小説は判り難いことだらけだが、それでも読んでしまう。
それはなぜかと考えると、やはり文章のうまさと読み易さということになるだろう。
彼の小説では、けっして難解な言葉は使わない。
すべて読み易く平易な言葉で書かれており、そして何よりも大切にしているのは、リズムである。
リズムよく流れていく文章、途中で躓いたり、立ち止まったりすることのない、自然と身をゆだねることのできるノリのいい文章、そういう文章を彼は目指しており、それを彼は「ほかの誰とも違うけれど、誰にでもわかる」文章と言っている。
また彼が影響を受けた作家レイモンド・チャンドラーについての次のような文章がある。
「プロットとはほとんど関係のない寄り道、あるいはやりすぎとも思える文章的装飾、あてのない比喩、比喩のための比喩、なくもがなの能書き、あきれるほど詳細な描写、無用な長広舌、独特の屈折した言い回し、地口のたたきあい、チャンドラーの繰り出すそういうカラフルで過剰な手管に、僕は心を強く引かれてしまうのだ」と。
チャンドラーについて語っているが、それがそのまま彼自身の文体について書いているようにも思えてくる。
そして彼の文体の最大の特徴といえるのが、数多くのメタファーである。
次々と繰り出されるメタファーの巧妙さや、そこに込められたユーモアを楽しみながら読んでいくうちに、気がつくと不思議な世界へと導かれている。
そしてもっともっと読んでみたいという気持ちにさせられる。
やっぱり村上春樹は、クセになる。


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