風に吹かれて

My Life & My Favorite things

Category: 読書

Tags: 村上春樹  短編小説集  

Comment (0)  Trackback (0)

村上春樹「女のいない男たち」

onnanoinai.jpg

村上春樹には珍しく、この本には「まえがき」が書かれている。
その書き出しは、次のようなもの。

<長編小説にせよ短編小説にせよ、自分の小説にまえがきやあとがきをつけるのがあまり好きではなく(偉そうになるか、言い訳がましくなるか、そのどちらかの可能性が大きい)、そういうものをできるだけ書かないように心がけてきたのだが、この『女のいない男たち』という短編小説集に関しては、成立の過程に関していくらか説明を加えておいた方がいいような気がするので、あるいは余計なことかもしれないが、いくつかの事実を「業務報告」的に記させていただきたいと思う。偉そうにもならず、言い訳がましくもなく、邪魔にならないようにできるかぎり努めるつもりだが、結果には今ひとつ自信が持てない。>

村上春樹が短編小説を書くのは久しぶりのこと。
「東京奇譚集」以来9年ぶりになる。
彼は自分のことを基本的には長編小説作家だと考えている。
そして短編小説を書くのは、長編小説を書いた後のペース配分の変更のようなものだと書いている。
また短編小説を書く<大きな喜びは、いろんな手法、いろんな文体、いろんなシチュエーションを短期間に次々に試していけることにある。ひとつのモチーフを様々な角度から立体的に眺め、追求し、検証し、いろんな人物を、いろんな人称を使って書くことができる。>
今回のコモチーフは、題名にあるように「女のいない男たち」である。
<どうしてそんなモチーフに僕の創作意識が絡め取られてしまったのか(絡め取られたというのがまさにぴったりの表現だ)、僕自身にもその理由はよくわからない。そういう具体的な出来事が最近、自分の身に実際に起こったわけではないし(ありがたいことに)、身近にそんな実例を目にしたというわけでもない。ただそういう男たちの姿や心情を、どうしてもいくつかの異なった物語のかたちにパラフレーズし、敷衍してみたかったのだ。それは僕という人間の「現在」の、ひとつのメタファーであるのかもしれない。あるいは遠回しな予言みたいなものかもしれない。それとも僕はそのような「悪魔払い」を個人的に必要としているのかもしれない。そのあたりは僕にも説明できない。>

この小説には、「ドライブ・マイ・カー」、「イエスタデイ」、「独立器官」、「シェエラザード」、「木野」、そして「女のいない男たち」という6つの短編が収録されており、「いろんな事情で女性に去られてしまった男たち、あるいは去られようとしている男たち。」の話が書かれている。
いつもと同じように、ちょっと風変わりな人物たちの、ちょっと変わった話ばかり。
心の迷宮に足を踏み入れ、そして話が突然終わってしまうところも、またお馴染みの春樹節である。
幾分戸惑いがあるが、それじゃあ、面白くないかといえば、そうではない。
間違いなく今回も、どんどんと物語の中に引き込まれていき、あっという間に時間が過ぎ、気がつくと読み終わってしまっていた。
ムラカミ・マジックである。
まるで「シェエラザード」で軟禁状態の主人公が、世話係の女性からベッドの上で、興味深い話を聞くような時間を過ごしたのである。
そういえば先日読んだ「ノルウェイの森」のなかにも
<「もし話のつづき聞きたいんなら明日話してあげるわよ。長い話だから一度には話せないのよ」と言うレイコさんに、「僕」は「まるでシエラザードですね」と答える>
という一節があった。

村上春樹の小説には、背後に目に見えない大きな力が働いているのを感じる。
それは「自分ではどうしようもない無意識なもの」である。
そして人はそれに押されるように、人生の破局へと突き進んで行ってしまう。
そんな不気味な気配が、濃厚に漂っている。


にほんブログ村 本ブログへ 
↑ クリック、お願いします。 ↑

スポンサーサイト
テーマ : 読んだ本の感想等  ジャンル : 小説・文学

Newer Entry村上春樹「職業としての小説家」 Older Entry村上春樹「ノルウェイの森」
Comments






カレンダー
06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
プロフィール

cooldaddy

Author:cooldaddy
住んでいるところ:青森県弘前市
出身地:香川県
年齢:今年(2008年)還暦です。
性別:男

還暦という節目を迎え、何か新しいことを始めようとブログを開設しました。
趣味のこと、生活のこと、心に残ったことなど、My Favorite thingsを、気ままに書いていこうと思います。
末永くおつき合いください。

映画サイト「マイ・シネマ館」もやっています。
こちらもよろしく。

ランキングサイトに参加しています。
もしよければクリック、お願いします。↓
ブログランキング・にほんブログ村へ 

cooldaddyの本棚
FC2ブログランキング
ブログ内検索
QRコード
QRコード

1234567891011121314151617181920212223242526272829303107 2017