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Category: 読書

Tags: 村上春樹  

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村上春樹「ノルウェイの森」

norway.jpg

村上春樹の「ノルウェイの森」を再読。
この小説を始めて読んだのは、出版後1、2年経った頃だったと思うから、今から25、6年ほど前のこと。
感動したことを覚えている。
だがそれでいて何に感動し、どんな内容だったかなどということは、今ではもうすっかり忘れてしまっている。
そこで、村上春樹が話題に上ったのを機会に、もういちど読んでみることにした。

この小説が出版されたのは、1987年。
村上春樹、38歳の時である。
彼は本書について次のように書いている。
「この話は基本的にカジュアルティーズ(うまい訳語を持たない。戦闘員の減損とでも言うのか)についての話なのだ。それは僕のまわりで死んでいった、あるいは失われていったすくなからざるカジュアルティーズについての話であり、あるいは僕自身の中で死んで失われていったすくなからざるカジュアルティーズについての話である」
喪失の物語である。
そしてその言葉が示すように、この小説では多くの「死」が満ちている。
親友キズキ、キズキの恋人で「僕」が愛する直子、永沢の恋人のハツエさん、そして大学の同級生であり恋人でもある緑の父親。
多くの死が主人公のワタナベの前を通り過ぎて行く。
そうした身近な死の様子を見ているうちに、これは村上春樹にとっての「青春の墓碑銘」なのだと思えてくる。

物語は37歳の僕が、ハンブルグ空港に降り立ち、その飛行機のなかで流れるビートルズの「ノルウェイの森」を聴いたことから、突然18年前の出来事を思い出すというもの。
その舞台となるのは1969年の秋、僕が「もうすぐ二十歳になろうとしていた」頃のことである。

同時に自分自身の当時のあれこれを思い出した。
1969年といえば、大学3年生の時である。
その年の春、それまで住んでいた県人寮を出て、目白台の下宿に移り住んだ。
後年知ったことだが、この下宿の近くには村上春樹氏が住んでいた「和敬塾」という寮があった。
この時村上氏は、すでに退寮した後だったようだが、この小説の第二、三章には、この寮生活のことが詳しく書かれている。
そしてこれは先に書かれた短編小説「蛍」とリンクした物語でもある。

ちなみに「和敬塾」と隣の「椿山荘」の間には、胸突坂という小道があって、よくそこを行き来した。
ある夏の夜、そこを通りかかった時、飛び交う蛍と遭遇した。
都会のど真ん中でまさか蛍と出会うとは。
まったく予想もしなかった出来事に心底驚いたが、これは椿山荘が夏の呼び物として養殖している蛍なのだということを後に知った。
その蛍が登場するのが、この章と短編小説「蛍」である。
またワタナベはこの後、2年間住んだ寮を出て、吉祥寺郊外の借家に住むようになる。
それと同じく自分もこの頃、目白台の下宿を出て吉祥寺の郊外の一軒家の離れを借りて住むことになった。
そういう偶然の一致もあって、特別深い思い入れをもって読むことになったのである。

この年の1月には全共闘が占拠していた東大安田講堂から学生が排除されるという事件があり、依然大学紛争の真っただ中にあった。
そして大学は封鎖や休講続きということもあって、もっぱらアルバイトに精を出していたような記憶がある。
小説のなかでもワタナベは大学紛争を横目に見ながら、レコード店やレストランでアルバイトをしている。
そんな時代であった。

この小説とは違って、自分の周りでは、身近な死というものはなかったものの、それでもどこにも行き場のない痛みや寂しさといったものは、少なからずあったように思う。
それは青年期特有の迷いや憂鬱といったものがもたしたものかもしれないが、それだけではなく、人間が本来抱え持つ哀しみから滲み出たものが、含まれていたように思う。
同じものがこの小説の底にも、色濃く流れているのを感じる。

冒頭に「多くの祭り(フェト)のために」と書かれているように、青春とはまさに祭り(フェト)である。
しかしその祭りは決して華やかでも煌びやかでも、また心楽しいものでもない。
むしろ暗く虚ろで空しいものが付きまとう。
そしてまるで運命に導かれるように人は人と出会い、影響を与え合い繋がっていく。
まるで目に見えない糸に操られるように。
そして気がつくと、時はあっという間に過ぎ去っている。
決して後戻りは出来ないのである。

久しく忘れていた感傷を呼び起こされながら小説を読み終わった。


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