山本一力「辰巳八景」
「辰巳」とは江戸深川のこと。
江戸城から見ると、深川が辰巳の方角(東南)に当たることからつけられた別名である。
その江戸深川を舞台にした「永代橋帰帆」、「永代寺晩鐘」、「仲町の夜雨」、「木場の落雁」、「佃町の晴嵐」、「洲崎の秋月」、「やぐら下の夕照」、「石場の暮雪」という八つの物語が書かれている。
それぞれの物語に登場してくるのは、ろうそく屋、せんべい屋、米屋、鳶、材木商、町医者、三味線屋、芸者、飛脚、履物職人など、名もなき商人や職人たちである。
そうした人たちの生業の様子が詳しく書かれているので、物語の面白さだけでなく、その生活を覗き見る面白さも同時に味わえる。
なかでも著者自身の作家としての修業時代を下敷きに書かれたのではないかと思われる「石場の暮雪」が興味深い。
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