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Category: 読書

Tags: 川本三郎  エッセイ・評論  

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川本三郎「映画の戦後」

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今年で戦後70年になる。
この節目に合わせて出版されたのが、川本三郎著の「映画の戦後」である。
昭和19年生まれ、ほぼ戦後と同じ年を重ねてきた著者による映画評論である。

前半が「戦後映画の光芒」と題して日本映画を、後半は「アメリカの光と影」と題してアメリカ映画を論じており、そのなかで映画と時代との深い関わりを説いていく。

まず最初に採り上げたのは、高倉健と菅原文太への追悼として書いた<「やくざ」が輝いていた時代>と<詫びるヒーロー>である。
そこではやくざ映画をプロレタリア文学のひとつとして捉え、そのルーツを長谷川伸の股旅ものに求めている。
そしてそれを支えた多くは、全共闘運動に関わった学生たちというよりもむしろ高度経済成長に乗り遅れた未組織労働者たちではなかったかと書く。
<高倉健は彼ら底辺の人間たちの言葉にならない無念の思いを背負って戦った。世の中には法律の力ではどうにもまらないことがある。法律を守っていては生きられない不公平がある。ぎりぎりに追いつめられたところで高倉健は刀を抜いた。切羽詰まった暴力だった。>
<高倉健は「自分は道を踏みはずした」「つまらねえ人間だ」という原罪意識を持った「悲しい、傷だらけ」のヒーローだった。>そして<古い日本人が持っていた美徳のひとつ、詫びることの大事さを知っているヒーローだった。>と結んでいる。
その「悲しい、傷だらけ」の「詫びるヒーロー」高倉健の後を追い、まったく違ったキャラクターとして登場してきたのが、菅原文太であった。
様式美を持っていた高倉健に対して、菅原文太はそんなものとは無縁の荒っぽく、タテマエよりホンネをむきだしにするヒーローとして暴れまくった。
そしてともに時代を象徴するヒーローとなったのである。

また<戦争の時代から、戦後へ>のなかでは、「原節子の悲しみ」を見出していく。
「精神主義と戦意高揚映画にとって不可欠な存在であった」原節子の戦後とは、どういったものであったか。
それを小津映画を主とした戦後の映画のなかで検証する。
川本は次のように書く。
<戦後、生き残った日本人はふたつの気持ちに引き裂かれた。生きていてよかったという思いと、他方、戦争で死んでいった者に対して申し訳ないという思いとに。戦後の混乱期をなんとか前向きに生きようとする思いと、他方、過去を、死者を忘れてはいけないという思いとに。>
そして戦争の影をほとんど感じさせない小津映画の中にも、間違いなく戦争が影を落としており、それを原節子演じる女性(紀子)のなかに見る。
そして<こういう女性の悲しみは、戦時中、軍国主義の優等生を演じ続けてきた原節子だからこそ美しく表現しえたといえる。>と結んでいる。

また「昭和三十年代の東京が捜査の舞台」と題した「警視庁物語」シリーズについての評論や、「歩くことから始まる」と題した美術監督、木村威夫論なども心に残る。

後半の「アメリカの光と影」では、「マッカーシズム」や「ヴェトナム戦争」を論じ、さらに「個独のヒーロー」クリント・イーストウッドを論じて、読み応えじゅうぶん。
いつもながらその卓見ぶりには驚かされる。
何度も読み返したくなる一冊だ。


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