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Category: 日本映画

Tags: 周防正行  

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映画「舞妓はレディ」

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周防監督が広く注目され出したのは、監督第2作目の「ファンシーダンス」からである。
これはピンク映画出身の周防監督が、一般映画として初めて撮った作品である。
そして続く「シコふんじゃった」でその評価をさらに高め、さらに「Shall we ダンス?」の成功によって、一躍時代を代表する監督のひとりとなったのである。
この3作は、いずれも知っているようでいて、実はあまりよく知らないマイナーな世界について徹底的にリサーチ、それをもとにその世界に飛び込んだ人間が次第に成長していく姿を描いたものである。
この後は、しばらくの空白期間(約11年)があり、そして久々に撮ったのが「それでもボクはやってない」と「終の信託」であった。
「知っているようでいて、実はあまりよく知らないマイナーな世界」という点では前3作と共通はするものの、まったく異質な作品であった。
そして今回の「舞妓はレディ」である。
これは、ひとりの少女が花街に飛び込み、一人前の舞妓になっていく姿を描いた映画である。
すなわち初期の3作品と共通する世界であり、原点回帰とも云えるような作品である。
「それでもボクはやってない」、「終の信託」はいずれも社会性を帯びたシリアスな映画だったが、「舞妓はレディ」は初期3作品同様に娯楽性がふんだんに盛り込まれており、これぞ周防作品といえるような遊び心に満ちた楽しい映画になっている。

ベースになっているのは、ミュージカル映画「マイ・フェア・レディ」。
言語学教授ヒギンズが、貧しい花売り娘イライザの訛りを矯正、上流のさまざまな仕来たりや礼儀作法を厳しく教えこむことで、上流階級の貴婦人に仕立て上げていくというストーリーであった。
それを、伝統と仕来たりの厳しい花街に置き換え、見事な話へと作り変えている。
さらにここでは言語学者、京野教授だけではなく、花街に生きる様々な人たちの舞妓を育てようとする情熱を加えることで、群像劇ともいえる面白さが生まれている。
いや、むしろそうした脇に生きる人たちを、丁寧かつ魅力的に描くことで、花街という特殊な世界がもつ伝統の奥深さがよりいっそう浮かび上がってくるという仕掛けになっているのである。
そのためのリサーチと伝統芸の仕込みには、相当の時間と労力がかけられたのではないかということが、画面の隅々からも窺われる。

さらにミュージカル仕立てになっていることで、花街がもつ独特の華やかさやファンタジックさがよりいっそう浮き彫りにされている。
ミュージカルという土壌のまったくない日本、そのなかでも伝統と格式の厳しい花街、この決して相容れぬふたつのものが強引に融合させられることで引き起こされる化学反応、そこから予想外の面白さが生まれている。
映画的快感を、心ゆくまで味わえた。

また京都の四季の美しさも、魅力のひとつ。
だが最大の魅力は、何といっても個性溢れる役者たちの顔ぶれである。
周防作品の常連である竹中直人、渡辺えり、草刈民代に加え、長谷川博己、田畑智子、岸部一徳、高島政宏、小日向文世、濱田岳、そしてワンシーンだけの出演という贅沢な使い方をされた妻夫木聡。
そうした個性豊かな役者たちが、嬉々として演じており、楽しませてくれる。
なかでも特筆すべきは舞妓役の新人、上白石萌音(かみしらいし もね)と女将役の富司純子。
上白石萌音は800人のオーディションの中から選ばれたというだけあって、その初々しさと歌声が素晴らしい。
舞妓誕生と同時に、魅力ある新人女優誕生の瞬間に立ち会えたという2重の歓びを味わうことができたのである。
さらにベテランの富司純子は、これまで培ってきた女の魅力を集大成したような役柄で、格式高いお茶屋の女将を、重厚かつ自然体で演じて魅せられた。
そういえば彼女は、かつて深作欣二監督の「おもちゃ」でも同様の役を演じたことがあった。
年輪を重ねた深い味わいが、そこにさらに加味されたというわけである。

古都、京都の持つ奥深い魅力を堪能させられた2時間15分であった。
映画が終わった後も、軽快なタイトル曲が頭の中でリフレインされ、しばらく鳴りやまなかった。
このうえなくハッピーな映画に、心ゆくまでハッピーな気分にさせられた。
周防監督はやっぱりうまい。
そして映画をこよなく愛していることを、今回もつくづくと教えられたのである。


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テーマ : 邦画  ジャンル : 映画

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