風に吹かれて

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Category: 読書

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林芙美子「放浪記」

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林芙美子の小説を読むのは、これが初めて。
しかし映画化されたものは、いくつか観ている。
そのほとんどが成瀬巳喜男監督作である。
「めし」、「稲妻」、「妻」、「晩菊」、「浮雲」といった作品で、いずれも成瀬巳喜男監督の代表作となったものばかりである。
「放浪記」も、同じく成瀬巳喜男監督によって映画化されており、主演の高峰秀子の名演が印象に残る映画であった。
また森光子が長年に渡って演じ続けた芝居としてもよく知られている。
菊田一夫が1961年に舞台化、初演以来、通算2017回という公演回数を数えたことでも話題を呼んだ。
さらに同じく林芙美子の小説「うず潮」と「放浪記」を原作にドラマ化したNHKの連続テレビ小説「うず潮」も記憶に残るところだ。
1964年に第4作目の朝ドラとして放送されたもので、ヒロインを演じた無名の女優、林美智子がこれによって一躍スターになった。
またこのドラマの人気に乗じて同年に作られた映画「うず潮」では、吉永小百合がヒロインを演じている。
この時のロケーションが郷里の香川県多度津町で行われた。
当時高校2年生だったが、この噂をキャッチするや、クラスの熱狂的なサユリストの友人を誘って、撮影の見学に駆けつけた。
そして苦労の末見つけたロケ現場で、当時人気絶頂の吉永小百合の姿を、至近距離で目にすることができたのである。
友人とふたり甘い感激に浸ったものだ。
そんなことをふと思い出した。

この小説が書かれたのは、大正末から昭和の初めにかけて、林芙美子、20歳前後の頃である。
大正11年、林芙美子は尾道の女学校を卒業すると同時に上京、その後数年間に渡って日記を書き溜めている。
それをもとに書いたのが「放浪記」であった。
初出は長谷川時雨が主宰する雑誌「女人芸術」での連載であった。
さらに昭和5年、纏めたものを出版するや、一躍ベストセラーとなったのである。

「私は宿命的な放浪者である。私は古里を持たない。」と書いて始まるこの小説には、貧しさや孤独に翻弄されながら、時に逞しく、時に弱音を吐きながらも、したたかに生きていこうとする林芙美子自身の姿が描かれている。
職を転々とし、また男たちを渡り歩き、木賃宿の薄汚れた煎餅布団の中や、カフェのテーブルで詩や日記を書く。
そこには彼女の赤裸々で飾らぬ本音の数々が、書き連ねられている。
また放浪のなかで触れ合った下層の人たちのリアルな姿が、躍動する文章によって生き生きと綴られており、昭和初期という暗く厳しい時代を、懸命に生き抜く若き日の林芙美子の情熱の迸りが切々と伝わってくる。

この小説はその後「続放浪記」「放浪記第三部」と書き継がれ、さらに何度も書き直されては改訂を繰り返している。
今回読んだのはそのなかでも原「放浪記」と云われる改造社版であった。
それについて、解説では次のように書いている。

 原「放浪記」が一生に一度しか書けない進行形の<青春の書>ならば、いま流布している「放浪記」は<成功者の自伝>である。文庫の<決定版>に魅かれた人は、この<改造社版>を読めば、またちがう感動が得られるであろう。(森まゆみ解説)

まさしく<青春の書>と呼ぶに相応しい、荒削りで生きの良さを感じさせる小説であった。


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