風に吹かれて

My Life & My Favorite things

Category: 読書

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ジョン・ウィリアムズ「STONER ストーナー」

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この小説が書かれたのは、1965年である。
もう半世紀も昔のことになる。
その時は格別注目された小説ではなかった。
そして著者のジョン・ウィリアムズが亡くなると、その存在はほとんど忘れ去られてしまった。
それはこの小説の主人公であるウィリアム・ストーナーが、死後ほとんど誰からも関心を持たれることがなかったことと奇しくも同じであった。
しかし2011年にフランスで翻訳されたことがきっかけで評判を呼ぶようになり、やがてヨーロッパ各国でベストセラーとなった。
さらにそれが引き金となって、本国アメリカでも再評価されるようになったのである。

貧しい農家のひとり息子として生まれた男が、ひょんなことから大学まで進むこととなり、そこで文学と出会い、卒業後も大学に職を得、生涯を教師として過ごしたというだけの話である。
ドラマチックなことは何も起こらない。ごくごく地味な小説である。
そんな小説のどこが読者を惹きつけたのであろうか。
それはここには紛れもなくひとりの男の本物の人生があるということだ。

主人公であるストーナーは平凡な男である。
特別才能に恵まれたわけでもなく、何ものかを成し遂げたわけでもない。
というよりもむしろ出世というものからは見放され、生涯恵まれない生活を送らざるを得なかった不運の男といってもいいだろう。
そしてそうしたことを静かに受け入れ、誰にも注目されることなく終えた生涯であった。
しかしそんな不運の男の物語が、読んでいくうちに他人事とは思えないほど切実に迫ってくる。
そこには誰もが等しく味わうであろう人生の哀歓、哀しみもあれば、歓びもある。
そして失敗もあり、挫折もある。
そうした思うに任せぬ人生の様々な浮き沈みが、ストーナーというひとりの男の姿を借りて淡々と描かれていく。

あとがきによると、訳者の東江(あがりえ)一紀氏にとってこれは、生涯最後の翻訳となった。
癌の闘病生活のなかで苦闘しながらこの小説の翻訳を続けていたが、昨年の6月、最後の1ページを残してこの世を去った。
そんな生き様がストーナーの生涯と重なって見えてくる。
そしてそうした事実が、この小説をさらに印象深いものにしてくれたのである。


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