風に吹かれて

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Category: 日本映画

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映画「そして父になる」

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子どもを取り違えられた二つの家族の姿を通し、家族とは何かを掘り下げたヒューマン・ドラマ。
カンヌ国際映画祭コンペティション部門審査委員賞受賞およびエキュメニカル賞の特別表彰をされた作品である。
実際の事件を下敷きにしたところは、「誰も知らない」と同様である。

こうした事件にはこれといった解決法があるわけではない。
どれが正解なのかは判らない。
結局時間をかけ、試行錯誤を繰り返していくしか方法はないのかもしれない。
その結果どんなことになっていくのか、それは誰にも判らないことなのだ。
だがそれぞれがこの現実から眼を背けることなく、真摯に向き合っていけば、きっといつかは何らかの出口が見つかるはずである。
そんな希望を予感させるような示唆を残して映画は終わる。

ドキュメンタリー出身の監督らしく、日常の何気ない姿のなかから静かに深いドラマを紡ぎ出していく。
台詞は少なく、生々しい感情表現もない。
ごくありふれた日常の繰り返しが映し出されていくだけである。
しかしその淡々とした映像のなかに、眼に見えるだけではない深くやるせないドラマが大きく息づいているのが見えてくる。
次第にドラマから眼が離せなくなってしまう。

出演俳優たちがいずれも適役である。
エリートサラリーマン野々宮良多を福山雅治、その妻みどりを尾野真千子、そしてもう一方の家族である斎木雄大をリリー・フランキー、妻ゆかりを真木よう子が演じている。
事件がなければ交流し合うことはけっしてなかったであろう二つの家族が、子供たちのためにその落差を乗り越えようと葛藤する姿が、彼らの演技からリアルに伝わってくる。
さらにそれぞれの子供を演じたふたりの子役も、それに負けない名演技を見せてくれる。
いや演技というよりも、生の日常の自然な姿である。
是枝監督の演出法の成果をそこに見ることができる。
「誰も知らない」の子役たちも印象に残ったが、今回の子役たちも負けてはいない。
また國村隼、夏八木勲、樹木希林、風吹ジュンといったベテランたちが、手堅く脇を固めていることも、この映画をさらに印象深いものにしている。

クールでスタイリッシュな映像と、それに被さるグレン・グールドによるバッハの「ゴールドベルク変奏曲」が、強く印象に残った。
それがこの映画のテーマの深刻さを、単に深刻なだけでは終わらせていない重要な要因になっている。
静かな旋律が深く心に沁みこんでくる。

是枝裕和監督の映画手法に、ますます磨きがかかってきたことを実感させられる映画であった。


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Comments


ありふれた日常の繰り返し…まさに是枝監督といった感じですね。本当に、
淡々とした中に、心に響いてくるものがありました。

素敵なブログですね♪

ihuruさん、コメントありがとうございました。
ihuruさんのブログを読ませていただきました。
頷けるところ、こういう見方もあるのかなど、興味深く読ませていただきました。
また映画のほかに読書感想など、いろいろと参考になる情報満載ですね。
時々訪問させていただきたいと思います。
今後ともよろしくお願いします。






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