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Category: 読書

Tags: ミステリー  

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トム・ロブ・スミス「チャイルド44 上下巻」

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2009年の「このミステリーがすごい! 海外編」で第1位になった作品である。
またこの本の訳者田口俊樹は、先日読んだマット・スカダー・シリーズの翻訳者でもある。
それでこの本を選んだというわけではないが、読後にその事に気づいたのである。

スターリン体制下のソ連を舞台にしたミステリーである。
主人公は、国家保安省の捜査官レオ・デミドフ。
欺瞞と恐怖に満ちた監視国家のなかで、職務に忠実な捜査官として働いていた。
だが、その仕事は無実の人間を反逆者として捕らえ、強制収容所送りにするといった無残なものであった。
それを彼は理想国家実現のためには必要な犠牲なのだと自らに言い聞かせ、正当化しようとする。
そして時には薬物を服用し、感覚を麻痺させるてまで役目を遂行しようとするのであった。
そうした行動はすべてエリートとしての自分に課せられた役目であり、その職務に忠実であることは、自らの身の安全を守るためには必要不可欠なことであった。
誰もが他人を監視し、わずかなミスが命取りになってしまう社会、親兄弟さえも信用できない監視社会、そんな身動きのとれない状況のなか、必死にバランスを取りながら綱渡りしようとするデミドフの危うさが痛々しい。
そしてそんな彼にも、ついに試練の時がやってくる。
彼をやっかむ狡猾な同僚から理不尽な告発をされ、地方の民警へと追放されてしまうのである。
そこで猟奇連続殺人事件と出会うことになる。
そしてその捜査を続けるうちに、彼自身も国家の反逆者として追われる身となってしまうのである。

圧倒的な迫力で迫ってくるミステリーである。
またサイコ・サスペンスであり、冒険小説でもある。
まさに一級のエンターテインメント小説である。

これは旧ソビエト時代に実際に起きたウクライナの猟奇連続殺人事件、チカチーロ事件をモデルにしたものである。
連続殺人事件の深い闇と独裁国家の恐怖が、酷寒の地を舞台に不気味に迫ってくる。
その暗さと寒さが、ふたつの狂気をさらに絶望的なものに感じさせる。

こうした社会においては、いちど信用を失った者は2度と浮かび上がることはない。
どこまでも落ちていくしかない。
そして一旦は逃れたとしても、権力は決して諦めることなく、どこまでも執拗に追いかけてくる。
そうした過酷な状況のなか、主人公デミドフは僅かな手がかりを頼りに事件の核心へと迫っていく。
それは、事件解決への道であるのと同時に、自らの人間としての再生の道でもあった。
二転三転する攻防戦は手に汗を握る展開で、圧倒的な面白さ。
まさに釘付けになって読み進んでいった。
さすが「このミステリーがすごい!」第1位の作品である。
読書の醍醐味を、これ以上ないほど味わわせてくれたのであった。


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