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ローレンス・ブッロック「倒錯の舞踏」《A Dance at the Slaughterhouse》

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東野圭吾の「流星の絆」を読んだことに触発されて、またミステリーが読みたくなってきた。
そこで家内に、これまでに読んだミステリーのなかで、どんなものが印象に残っているのかを聞いてみた。
家内は10数年前、ミステリーを読み漁っていたことがあったからだ。
それによると、真っ先に思い浮かぶのは、ローレンス・ブロックの「マット・スカダー・シリーズ」の「聖なる酒場の挽歌」ということであった。
さっそく図書館で探してみたところそれはなく、「墓場への切符」、「倒錯の舞踏」、「獣たちの墓」、「死者との誓い」、「死者の長い列」、「処刑宣告」、「皆殺し」、「償いの報酬」の8作が見つかった。
「マット・スカダー・シリーズ」は全部で17作あるので、約半分ということになる。
しかもこれらはすべて後期のものばかり。
「聖なる酒場の挽歌」を含めた前期の作品は1作もない。
本来なら前期の作品のなかの「八百万の死にざま」や「聖なる酒場の挽歌」などから入っていくのがオーソドックスな読み方なのだろうが、ないのだから仕方がない。
まずは8作品のなかから選ぶことにした。

「マット・スカダー」初心者としては、何の手がかりもないので、弘前図書館のHPの蔵書検索で、それぞれの内容を調べてみたが、これといって決め手に欠ける。
迷った末に、まずは手始めに「倒錯の舞踏」を読んでみることにした。
これはシリーズ9作目の作品で、1992年のエドガー賞の長編賞を受賞している。
シリーズのなかでは「墓場への切符」、「獣たちの墓」とともに倒錯3部作と言われているもので、その第2作目にあたる。
ちなみにエドガー賞というのは、アメリカ探偵作家クラブが、その年の優れた推理小説に授与する賞である。

夫婦が強盗に襲われ、妻が暴行を受けて殺されるという事件が起きた。
しかし「犯人は夫」ではないかとの疑いを持った妻の兄が、スカダーに捜査を依頼してきた。
さっそく事件の捜査を始めたスカダーだったが、そこにAA(Alcoholics Anonymous / アルコホーリクス・アノニマス アメリカのアルコール依存症者の自主治療協会)の集会で知り合った男が、あるビデオを見てほしいと相談を持ちかけてきた。
そこに写されていたのは男と女が少年を弄び拷問したあげく、最後には殺してしまうというスナッフ・フィルムであった。
こうしてふたつの事件を追うことになったスカダーだが、その全貌が姿を現すにしたがって、まったく別のものだったふたつの事件が、ひとつの糸で繋がっていることが明らかになってくるのであった。

大都会ニューヨークを舞台に事件は繰り広げられる。
ニューヨークの街は、まさに犯罪の坩堝である。
どんな異常な事件が起きても不思議ではない深い闇を持っている。
そんな闇のなかを、スカダーはタフに泳ぎ渡っていくのである。

ところでマット・スカダーとはいかなる男なのか。
彼はニューヨーク市警の元警官である。
今は8番街と9番街の間にある安ホテルに住み、無免許の探偵をしている。
彼のキャラクターの最大の特徴は、アル中ということである。
アル中の私立探偵マット・スカダーというのが、このシリーズの謳い文句になっている。
しかし今作ではアルコールの誘惑からは逃れ、いっさい口にすることはない。
そして、毎晩「AA(アルコール依存症者の自主治療協会)」に欠かさず通い、アル中を克服しようと努めているのである。
そんな彼が、酒の誘惑にも負けず粘り強く事件を追っていく。

シリーズ最大の面白さは、何と言ってもスカダーと登場人物たちとの会話の妙である。
相手は時に友人であったり、犯罪者であったり、捜査の過程で出会う様々な人たちである。
そうした人たちとの間で、ウィットに富んだ会話が静かに交わされていく。
そこから浮かび上がってくるのは、現代ニューヨークの多様な姿であり、それぞれの人生である。
時に優しく、時に残酷に。

また登場人物の多彩さも魅力のひとつ。
元ヒモで現在は美術商である黒人チャンス、情報屋ダニーボーイ・ベル、バーのオーナーだがギャングでもあり殺し屋でもあるミック・バルー、そして黒人のストリートキッドTJ。
ひと癖もふた癖もある怪しい奴らが、犯罪都市ニューヨークの暗闇でタフに生きている。
さらに高級娼婦のエレイン・マーデル、スカダーと彼女のお互いの領域に踏み込まない大人の関係が、粋で味わい深い。
こうした個性的な人物が入り乱れ、それぞれの人生が交錯していく。
それらが織り成す犯罪都市ニューヨークの光と影、そこに漂う大都会の孤独と哀愁、そうしたものに言い知れぬ魅力を感じてしまうのである。
まさにハードボイルドの魅力満載の小説なのである。
しばらくはマット・スカダーのシリーズを、追ってみることにしようかなと考えている。


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テーマ : 読んだ本の感想等  ジャンル : 小説・文学

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