風に吹かれて

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Category: 読書

Tags: 乙川優三郎  

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乙川優三郎「脊梁山脈」

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これまで時代小説だけを書いてきた乙川優三郎初の現代小説である。
終戦後、中国から復員してきた主人公が、引き揚げ列車の中で知り合い、親身になって世話をしてくれた恩人小椋康造の消息を求めて旅をすることから物語は始まる。
そしてその旅のなかで、小椋康造が木地師であることを知る。
それがきっかけとなって木地師の奥深い世界を知り、その仕事と歴史を辿ることに情熱を傾けるようになっていく。
さらに旅のなかで知り合った勝気で奔放な画家の女と、東北の温泉町で生きる古風な女との間で揺れる姿も、同時に描かれる。
そしてかつては漂白の民であった木地師の千数百年に渡る歴史のなかから、日本文化の源流の一端に触れることになる。
こうした作業はすべて、戦争で受けた傷を癒そうとする行為に他ならない。
その過程で主人公が何を感じ何を見ることになったのか、そして国家に翻弄され続けた自分たち日本人とはいったい何だったのか、そうした壮大なテーマが切々と描かれていく。

それにしても木地師の世界がこれほど奥深い歴史を伴ったものであったとは、この小説で初めて知ったことだ。
朝鮮半島から渡ってきた渡来人たちの果たした大きな役割、そして古代王朝との深い繋がり、そこから古代史最大の事件ともいわれる大化の改新の謎にまで遡っていくことになる。
そんな壮大なロマンが木地師の世界の裏に隠されていたとは、まさに驚きである。
さらにそれを古代史のなかから探り当て、こうした小説にまで仕立て上げた作者の並々ならぬ労力には、ただただ感服するしかない。
「43歳でデビューしてから時代小説だけを書いてきました。寡作な60歳です。体も弱く、残された時間はあまりありません。新しいことに挑戦するなら今のうちと、思い切って現代小説を書いてみました」
作者のこの言葉からも、そうした意気込みの程が伝わってくる。

ちなみにこの小説は昨年度(2013年)の大佛次郎賞を受賞している。

果たして主人公は、脊梁山脈を無事越えることができたのだろうか?
そしてそこから見える景色とはどんなものであったのだろう?
さまざまな余韻を残しながら読み終わった。


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テーマ : 読んだ本の感想等  ジャンル : 小説・文学

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