風に吹かれて

My Life & My Favorite things

Category: 読書

Tags: ミステリー  

Comment (0)  Trackback (0)

今野敏「隠蔽捜査シリーズ」

inpeisousa2-5.jpg

今野敏の「隠蔽捜査」がシリーズ化されていることは、先日のブログに書いたが、その第2話から第5話までをまとめて図書館から借りてきた。
そして一日一冊のペースで読み進め、今日すべてを読み終わった。
これほど夢中になって読んだのは久しぶりのこと。
すっかり主人公竜崎のキャラクターに嵌ってしまったのである。

警察という組織は上意下達が基本である。
すなわち階級が常に物を言う社会である。
そんななかにあって竜崎の立場は微妙である。
第1話の連続殺人事件の捜査において、彼はこの事件を隠蔽しようとした警察上部の動きに反対する立場を貫いた。
さらにこの事件と平行して彼の息子が麻薬に手を出すという不祥事が発覚、悩んだ末に結局その事実を隠さず、家族に対しても同様の立場を貫くことにしたのである。
そして息子の罪を隠蔽することなく、自首をさせた。
その結果、責任を取る形で大森署の署長へと降格をさせられたのである。
だから第2話以降は、役職は地方警察の署長でありながら階級は警視長という特殊な立場の人になった。
すなわち役職は彼より上だが階級は下という者が大勢出現することになったのである。
そうした事実を竜崎は時に応じてうまく使い分け、上からの無理難題やごり押しの防波堤にしながら、捜査を進めていく。
そのサジ加減が絶妙である。

警察内部には様々な確執やしきたりがある。
管轄同士の縄張り意識や主導権争い、面子や縦割り行政の弊害、キャリアとノンキャリアの確執、そうした人間関係や争いが日々複雑に絡み合っているのが警察という組織の実態である。
そうしたなかで、どうやって障害を切り抜けて事件を迅速に解決していくのかが、このシリーズの面白さである。
そんな降りかかる障害を切り抜けるための最後の切り札となるのが、警視長という彼の階級なのである。
いわば水戸黄門における葵の紋の印籠のようなもので、ここぞという時に使い分けることで絶大な効果を上げていく。
しかしそうした権威をしょっちゅう振りかざすわけではない。
そのことについてはむしろ「卑怯なやり方だと」真摯に考えている。
しかしそれが彼にとっての大きな武器であることは間違いなく、実際その伝家の宝刀を抜いた時の効果には目が覚めるようなものがある。
これを使うとそれまでの理不尽な無理難題が一気に萎んでしまうほどである。
そうした痛快な場面を味わえるのも、この小説を読むうえでの大きな魅力になっている。

第2話の「隠蔽捜査・果断」で扱われるのは大森署の署長としての初仕事となった立てこもり事件である。
さらに第3話の「隠蔽捜査・疑心」では来日したアメリカ合衆国大統領暗殺事件、第4話「隠蔽捜査・転迷」では麻薬取引に絡んだ外務官僚殺人事件、そして第5話の「隠蔽捜査・宰領」では衆議院議員誘拐事件を扱っている。
どの話も現場の息遣いが聴こえてくるような臨場感に溢れ、スリリングな展開が次々と繰り広げられていく。
さらに彼の家庭の問題も加わることで、さらなる窮地に立たされていく。
そうしたを難題に心乱されながらも、自らの感情をコントロールしながら果敢に事件に挑んでいく姿にはわくわくさせられるものがある。
しかしそうした事件のなかにあっても、実際に彼自身が現場で捜査をするわけではない。
あくまでも人を動かすのが彼の仕事である。
だから常に人を観察し、それぞれの持てる力をいかに発揮させて事件を解決していくかということに心を砕いている。
そしてその人身掌握と使い分けるうまさが竜崎のもつ大きな魅力になっているのである。
当初は彼に反発していた人たちが彼の高い能力や私利私欲のない姿を見ているうちに、次第に心を開き始め、最後は敬服するまでに至る展開には、快哉のみならず感動さえも覚えてしまう。
そして事件解決の最後には一緒に事件を解決したような安堵感と充実感に浸ることになるのである。

このシリーズには他に「初陣 隠蔽捜査3.5」というのがあるそうだ。
これはシリーズの準主役である伊丹俊太郎が主人公の小説である。
彼は竜崎の同期で幼友達、今は警視庁の刑事部長である。
いわば番外編のようなものである。
さっそく図書館で借りて読んでみようと思っている。


ブログランキング・にほんブログ村へ 
  ↑ クリック、お願いします。 ↑
スポンサーサイト
テーマ : 読んだ本の感想等  ジャンル : 小説・文学

Newer Entry映画「舟を編む」 Older Entry初雪
Comments






カレンダー
06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
プロフィール

cooldaddy

Author:cooldaddy
住んでいるところ:青森県弘前市
出身地:香川県
年齢:今年(2008年)還暦です。
性別:男

還暦という節目を迎え、何か新しいことを始めようとブログを開設しました。
趣味のこと、生活のこと、心に残ったことなど、My Favorite thingsを、気ままに書いていこうと思います。
末永くおつき合いください。

映画サイト「マイ・シネマ館」もやっています。
こちらもよろしく。

ランキングサイトに参加しています。
もしよければクリック、お願いします。↓
ブログランキング・にほんブログ村へ 

cooldaddyの本棚
FC2ブログランキング
ブログ内検索
QRコード
QRコード

1234567891011121314151617181920212223242526272829303107 2017