風に吹かれて

My Life & My Favorite things

Category: 読書

Tags: エッセイ・評論  

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久世光彦「書林逍遥」

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<私はずいぶん長いこと「隠れ太宰」だった。「隠れキリシタン」とおなじように信仰を隠して、じっと身を潜めていた。>という書き出しで始まるこの本は、久世光彦らしい拘りに満ちた本である。
読み巧者、久世光彦らしい一冊である。

太宰治「お伽草紙」、江戸川乱歩「人間椅子」、宇野千代「おはん」、船橋聖一「雪婦人絵図」、幸田文「おとうと」、川端康成「片腕」、吉村昭「少女架刑」、向田邦子「あ・うん」など24篇が収められている。
なかでも昔読んで印象深かった三島由紀夫の「潮騒」、中川與一「天の夕顔」、柴田翔「されど われらが日々」が収められているのが、個人的にはうれしい。
官能的で匂い立つような文体で書かれた愛読書についての想いを読んでいるだけで、どの本も読みたくなってしまう。
偏愛ともいえるような執着心が、作品のもつ隠された魅力を手品のように解き明かしていく。
そこからこれまで知らされていたそれぞれの本の魅力とはまた違った新しい一面が透けて見えてくる。

<冬の日の昏れ方、草を踏んで書林を逍遥すれば、枝々の組み合わさる彼方の空は、折りしも斜陽に染まって鬱金(うこん)の色である。残照と、やがてやってくる夜との狭間で、私たちはゆくりなくも「書」について想う。書は「時代」を映し、かつての数々の「恥」を呼び覚ます。特に若い日に読んだ書は厄介だ。一冊一冊に恥が纏い付いている書の記憶は、突然蘇って、いまもこの身を苛んで離れない。「右大臣実朝」の顰(ひそ)みに倣うなら、《歳月トハ、怯懦ノ姿デアロウカ》>
わかるなあ、この気持ち。
そして久世光彦はこの本で惜し気もなく自らの恥部を晒していくのである。
人目を忍び、禁断の園へと足を踏み入れて行った若き日の著者と同じように、胸躍らせて耽読したのであった。


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テーマ : 読書記録  ジャンル : 小説・文学

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Author:cooldaddy
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年齢:今年(2008年)還暦です。
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還暦という節目を迎え、何か新しいことを始めようとブログを開設しました。
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