風に吹かれて

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Category: 読書

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池井戸潤「下町ロケット」

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第145回(2011年上半期)直木賞受賞作品である。
受賞当時、話題になり面白いという情報が飛び交っていたが、題名の「下町ロケット」から連想したのは、町工場のオヤジたちが奮闘してロケットを作り上げるという、どこかコミカルで夢物語めいたものであった。
そうした勝手に作り上げた先入観があったので、この小説を読むことは、いささか躊躇したのであった。
また人気作品ということで、予約が殺到、なかなか借りる機会がなかったというのも大きな理由であった。
ところが先日図書館で本を漁っているとき、偶然この本と出合った。
直木賞受賞から2年が経ち、予約待ちの時期も終わり、ようやく書棚に並ぶことになったわけである。
こういう出合いも何かの縁であろう。
さっそく借りて読んでみることにした。

なるほど評判が高かったことがよく判る面白さであった。
よく練られた展開、飽きさせないテクニック、それらにつられてあっという間に読んでしまった。

「コミカルで夢物語めいた」物語という予想は、見事に外れた。
というよりも、もっとリアルで洗練された物語であった。

主人公は東京都大田区にある実家の町工場を引き継いだ若き社長である。
宇宙科学開発機構の一員として国のロケット事業に従事していたが、自らが責任者として開発を進めていたロケット打ち上げの失敗と、父親の死が重なって、稼業である町工場を引き継いだ。
そして高い技術力を生かして業績を伸ばしてきたが、ある日突然、大口の取引先から納品中止を言い渡される。
さらに大手のナカシマ工業から特許侵害で訴えられる。
こうしたダブルパンチのなか、どうやって苦境から逃れ、さらにはロケット開発という巨大なプロジェクトに社運を賭けて加わっていくことになるのかといった話が、スリリング描かれていく。

まったく出口が見つからず、会社は次第に追い詰められていく。
そしてギリギリのところまできたとき、ふとしたきかけから流れが大きく変わることになる。
そのあたりのダイナミックな展開はまさに圧巻であった。

著者の池井戸潤は三菱銀行の銀行マンから企業コンサルタントを経て小説家になった人である。
そうした経験がこの小説では遺憾なく活かされており、銀行や大企業の内幕、とくにその闇の部分がかなり専門的に、リアルに描かれている。
そして倒産が現実のものとして迫りくるなか、離反や造反によってバラバラになっていた会社が、大企業が課してきた高圧的ともいえる高いハードルに立ち向かうなか、結束を始め、そしてついにはひとつになっていく。
そうした展開を読んでいるうちに、思わず胸が熱くなってしまった。

久々に胸躍らせて読んだ小説であった。
エンターテインメントの王道を行く、直木賞受賞が頷ける作品であった。


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テーマ : 図書館で借りた本  ジャンル : 本・雑誌

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