風に吹かれて

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Category: 読書

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志水辰夫「うしろ姿」

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志水辰夫の小説を読むのは、4年前に「男坂」を読んで以来のことである。
「うしろ姿」も「男坂」同様の短編集である。
「トマト」「香典」「むらさきの花」「もう来ない」「ひょーう!」「雪景色」「もどり道」の7編が収められている。

いずれも社会の荒波のなか、過酷な人生を生きてきた人たちばかり。
その己の過去を振り返り、それぞれが深い思いをもってひとつの決着をつけようとする姿が描かれている。

主人公たちはみな精一杯生きてきた人たちばかりである。
しかしそれは自ら思い描いた生き方というわけではない。
結局彼らは皆、そうした生き方しか出来なかったというだけである。
そしてそのことについて今更とやかく言っても仕方がないと考えてはいるものの、迷いや悔いといったものが押さえようもなく顔を覗かせる。
そんな主人公たちの複雑な胸中が、香り立つような筆遣いで描かれている。
そこから漂う哀愁は、独特の色合いを持っている。
ファンの間ではこれを「シミタツ節」と呼んでいるようだ。

志水辰夫は1936年生まれで、現在76歳、冒険アクションから恋愛小説、時代小説まで手がける作家である。
高知商業卒業後、公務員を経て、出版社に勤務、その後フリーライターとなり、40代で本格的に小説を書き始めて作家としてデビュー。
「うしろ姿」は2005年の作品、この小説を最後に現代小説を書くことをやめ、時代小説の世界一本に絞り込むことになった。
そのことについてあとがきに次のように書いている。

<わたしたちの時代は終わろうとしている。自分たちのたどってきた道とはいったい何だったのか。それは経済だけを突出させてきた道にほかならなかったが、豊かになることが最善だと信じて生きてきたのだからいまさらとやかく言える資格はない。手探りしながら生きてきて、いまたそがれに向って歩いていることを自覚するだけである。一緒に歩いてくれた読者がいただけでもしあわせな時代に生まれ合わせたと感謝している。この本を手にとってくださった方に心からお礼を申し上げます。この手の作品はこれが最後になります。>

こう書いて志水辰夫は時代小説という新たな世界へと旅立ったのである。
旅立つその「うしろ姿」からは、ひとつの時代が終わったことへの感慨や、それに区切りをつけた男の決意が漂っている。


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テーマ : 図書館で借りた本  ジャンル : 本・雑誌

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