風に吹かれて

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Category: 読書

Tags: 西村賢太  

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西村賢太の小説

苦役列車」「暗渠の宿」を読んだことで、西村賢太の小説に嵌ってしまった。
今月初めのことである。
その後「小銭をかぞえる」「瘡瘢旅行」「どうで死ぬ身の一踊り」「二度はゆけぬ町の地図」と読み継ぎ、今は「人もいない春」と「寒灯」を読んでいる。
この2冊を読み終えると、単行本になった小説はすべて読んだことになる。
この他には「私小説書きの弁」「一日」という随筆集と「西村賢太対談集」の3冊が出版されている。
いずれこちらも読むつもりである。

しかし何をしてこれほど西村賢太の小説に夢中にさせられるのか。
読んで楽しいわけでもなく、ドラマチックでもなく、また強く共感させられるわけでもない。
いや、むしろ反発や不快を感じることのほうが多い。
神経を逆撫でされることもしばしばである。
内容は同じ愚行の繰り返し、それなのに飽きずにつぎつぎと読まずにはいられない。
そんな不思議な魅力を発散しているのである。

まず最初に惹かれたのは彼の際立った経歴であった。
掻い摘んで書くと次のようなものである。

1967年東京都江戸川区で運送業を営む家庭に生まれる。
父親は数年ごとにジャガーやカマロやクーガーなどを買い換える外車マニアであったが、西村が11歳の時に強盗強姦事件を起こして逮捕され、7年の実刑判決を受ける。
それがため両親は離婚、母親と3歳上の姉とともに生家を出て暮らすことになる。
中学では不登校を繰り返す落ちこぼれで、ために高校は全寮制の高校しか行くところがなく、それを嫌って、結局進学はせず、母親の金をくすねて家を出る。
そして鶯谷の3畳一間の安アパートに住み、以後港湾荷役という肉体労働を主にやりながら生活していくことになる。
しかし生来の怠け癖や計画性のなさゆえ、一日の賃金はあっという間に使いきり、家賃は滞納、ついにはアパートを追い出されるということを繰り返す。
またアルバイト先で同僚や雇い主ともめることもしばしばで、暴力沙汰を起こして逮捕されるという事件も起こしている。
そうした荒んだ生活のなか、田中英光や藤澤清造といった私小説作家と出会う。
とくに藤澤清造との出会いは衝撃的で、以後彼の没後弟子を名乗るようになる。
以来石川県七尾市にある藤澤清造の墓参は欠かさず、2001年には「清造忌」を復活させる。
そして全7巻からなる「藤澤清造」全集を出版することを、生涯をかけた自らの使命とするのであった。
2003年には自らも同人誌に参加して小説を書くことを始め、同年7月に発表した「けがれなき酒のへど」が『文學界』に転載され、同誌の下半期同人雑誌優秀作に選出される。
また同作が2006年の芥川賞候補、第19回三島由紀夫賞候補、「一夜」が第32回川端康成文学賞候補、そして2007年『暗渠の宿』で第29回野間文芸新人賞を受賞。
2008年「小銭をかぞえる」で第138回芥川賞候補。2009年「廃疾かかえて」で第35回川端康成文学賞候補。
そして2010年「苦役列車」で第144回芥川賞を受賞することになる。
また芥川賞受賞後の2011年には清造の代表作『根津権現裏』を新潮文庫より復刊させ、2012年には同文庫より、自ら編集した「藤澤清造短篇集」も刊行する。
そして現在に至っている。

以上が西村賢太が芥川賞を受賞するまでの道のりであるが、こうした経歴を読むだけでもいったいどういう人物なのか、大いに興味をそそられる。
中卒の芥川賞作家というだけでも異色なうえに、ホームレスすれすれのような生活を送り、おまけに犯罪の匂いまで発散させている。
それだけで何やらスキャンダルめいた、異形の人物像が浮かび上がってくる。
そうした西村自身の道のりを投影した主人公が、現実の壁にぶつかって慌てふためいたり、居直ったりする様が一昔前の私小説のような擬古典的な文体で書かれると、何とも不可思議な世界が現出してくるのである。
描かれている卑近な日常世界と格調高い文体との落差、そこから立ち昇ってくるおかしくてやがて哀しき世界、読めば読むほど、独特の小説世界に捉われていくのである。
しかしこれもまだほんの一部で、まだまだ言葉にしきれない魅力が隠されている。
それが何なのか、これからもじっくりと考えてみたいと思っている。

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テーマ : 読書  ジャンル : 小説・文学

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