風に吹かれて

My Life & My Favorite things

Category: 読書

Tags: 葉室麟  時代小説  

Comment (0)  Trackback (1)

葉室麟「いのちなりけり」

inochinarikeri.jpg

先日の「散り椿」に続いて読んだ葉室麟の「いのちなりけり」は、雨宮蔵人(くらんど)と妻咲弥(さくや)の波乱の人生を描いた小説である。
雨宮蔵人は佐賀鍋島藩の支藩である小城藩の武士である。
一見凡庸に見える蔵人だったが、実は隠れた剣の達人であった。
それを見抜いた咲弥の父、天源寺刑部は彼を咲弥の入り婿として迎えた。
しかし咲弥は死別した前夫、多門のことが忘れられず、蔵人を受け入れようとはしない。
そして「強いばかりでなく風雅の道が分かってこそ奥行きのある武士となる。どのような和歌を好きかということでその人間の心栄えが分かる。だからどんな和歌が好きかを教えて欲しい」と迫るが、蔵人は答えることができない。
そんな蔵人に対して「答えるまでは寝所をともにしない」と宣言する。
ここからふたりの波乱の人生が幕を開けることになる。

小城藩の藩内抗争から天源寺刑部が何者かに刺殺され、その疑いを持たれた蔵人は藩を出奔、咲弥も水戸家の奥女中となって水戸光圀のもとで暮らすことになる。
そこに将軍綱吉と水戸光圀との暗闘をからませながら、数奇な運命によってふたりが翻弄されていく物語が続いていく。
その抗争のなかで、蔵人は和歌を探し求めていく。
そして咲弥は離れ離れになることで、蔵人の真の姿を知ることになっていく。
最後は罠と知りつつ、咲弥に逢うために死を覚悟のうえで、京都から江戸を目指して走り抜けてゆく。
「四十を過ぎても女人をかように思い続けているとは、わしは愚か者だな」と思いながら。
しかし「何度生まれ変わろうとも咲弥殿をお守りいたす。わが命に代えて生きていただく」という一途な思いだけを胸に江戸を目指す。
まさに死を覚悟した大人の純愛物語である。
そして最後に蔵人が選んだのは「古今和歌集」の詠み人知らずの和歌「春ごとに花のさかりはありなめど、あひ見むことはいのちなりけり」であった。
それは「天地に仕え、命に仕える」を旨とする雨宮蔵人の清冽な生き様そのものを表すような和歌であった。

鍋島藩といえば「葉隠」を生み出した藩として知られているが、この物語が「忍ぶ恋こそ至極の恋と存じ候」の言葉とともに、後日談として「葉隠」成立へと繋がっていると匂わせるところが、さらに深い余韻を残している。
この小説は第14回松本清張賞を受賞した作品である。


ブログランキング・にほんブログ村へ 
  ↑ クリック、お願いします。 ↑
スポンサーサイト
テーマ : 読書記録  ジャンル : 小説・文学

Newer Entryタケウチサイクル創業100周年記念パーティー Older Entry1歳と7ヶ月
Comments






Trackbacks

先日の「散り椿」に続いて読んだ葉室麟の「いのちなりけり」は、雨宮蔵人(くらんど)と妻咲弥(さくや)の波乱の人生を描いた小説である。雨宮蔵人は佐賀鍋島藩の支藩である小城藩の武士である。一見凡庸に見える蔵人だったが、実は隠れた剣の達人であった。それを見抜い...
カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
プロフィール

cooldaddy

Author:cooldaddy
住んでいるところ:青森県弘前市
出身地:香川県
年齢:今年(2008年)還暦です。
性別:男

還暦という節目を迎え、何か新しいことを始めようとブログを開設しました。
趣味のこと、生活のこと、心に残ったことなど、My Favorite thingsを、気ままに書いていこうと思います。
末永くおつき合いください。

映画サイト「マイ・シネマ館」もやっています。
こちらもよろしく。

ランキングサイトに参加しています。
もしよければクリック、お願いします。↓
ブログランキング・にほんブログ村へ 

cooldaddyの本棚
FC2ブログランキング
ブログ内検索
QRコード
QRコード

12345678910111213141516171819202122232425262728293006 2017