風に吹かれて

My Life & My Favorite things

Category: 読書

Comment (0)  Trackback (1)

向田邦子「隣の女」

tonarinoonna.jpg

久々に読んだ向田邦子の小説。
思わず「うまい!」と唸ってしまった。
さすが短篇の名手といわれるだけのことはある。
表題作『隣りの女』の他に『幸福』『胡桃の部屋』『下駄』『春が来た』の5篇が収録されており、どの話も面白いが、なかでも『隣りの女』と『胡桃の部屋』『春が来た』は絶品である。
いずれも家族の物語だが、その日常の裏側に潜んだ様々な情念が見事に表現されており、サスペンス小説を読むようなドキドキ感を味わいながら読んだ。

昔観た向田邦子シナリオのドラマに「冬の運動会」というのがあったが、そのなかで志村喬演じる元裁判官で現在は大学で教鞭をとる祖父が、家族に隠れて下町の小さな家に藤田弓子演じる若い恋人と住んでおり、そこでは普段の謹厳実直な顔とはまったく違う顔をした祖父がいるというシーンがあった。
ドラマの粗筋はほとんど忘れてしまったが、なぜかそのシーンだけは強く印象に残っている。
この小説でも『幸福』『胡桃の部屋』『下駄』の3篇に、これと同じようなシチュエーションが登場してくる。
家族には真面目一方の堅物と思われていた父親が、ある日突然姿を消して女の元に走ってしまう。
こうした設定が何度も繰り返されるのが、向田邦子作品の特徴のひとつのようだが、それによって家族というものには、こうした危うさが常に秘められているのだということを語っているのであろう。
しかしそれがけっして修羅場にはならず、むしろユーモアを交えて語られるところが、向田邦子のもうひとつ特徴のようでもある。
結局人というのは、皆どうしようもない生き物で、間違いを犯したり、人を傷つけたり、後悔したりといったことを繰り返すものなのである。
そしてそうした愚かなことを繰り返しながらも、どこか愛すべきところを持っているのが人間である。
そんな人を見る視線の優しさが、向田邦子の小説の最大の魅力なのかもしれない。
久々に向田邦子の小説を読んで、そのことをあらためて思ったのであった。


ブログランキング・にほんブログ村へ 
  ↑ クリック、お願いします。 ↑
スポンサーサイト
テーマ : 短編小説  ジャンル : 小説・文学

Newer Entry1歳と7ヶ月 Older Entry葉室麟「散り椿」
Comments






Trackbacks

久々に読んだ向田邦子の小説。思わず「うまい!」と唸ってしまった。さすが短篇の名手といわれるだけのことはある。表題作『隣りの女』の他に『幸福』『胡桃の部屋』『下駄』『春が来た』の5篇が収録されており、どの話も面白いが、なかでも『隣りの女』と『胡桃の部屋』...
カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
プロフィール

cooldaddy

Author:cooldaddy
住んでいるところ:青森県弘前市
出身地:香川県
年齢:今年(2008年)還暦です。
性別:男

還暦という節目を迎え、何か新しいことを始めようとブログを開設しました。
趣味のこと、生活のこと、心に残ったことなど、My Favorite thingsを、気ままに書いていこうと思います。
末永くおつき合いください。

映画サイト「マイ・シネマ館」もやっています。
こちらもよろしく。

ランキングサイトに参加しています。
もしよければクリック、お願いします。↓
ブログランキング・にほんブログ村へ 

cooldaddyの本棚
FC2ブログランキング
ブログ内検索
QRコード
QRコード

12345678910111213141516171819202122232425262728293011 2017