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Category: 読書

Tags: 時代小説  

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冲方丁(うぶかた・とう)「天地明察」

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2010年の本屋大賞を受賞した小説である。
以前から読みたいと思いながら、人気作品ということで、図書館ではいつも貸し出し中で、なかなかこちらには回ってこなかった小説である。
ところが先日図書館に行ってみると、書棚にこれが並んでいるのを発見、さっそく借りてきた。

江戸時代、4代将軍徳川家綱の時代、幕府に仕える囲碁の棋士であり、算術と天文学にも強い関心をもつ青年・安井算哲こと渋川春海が、家綱の輔佐役である会津藩藩主、保科正之の命を受けて、日本初の暦「大和暦」を生み出すまでの苦闘の歳月を描いた物語である。
囲碁、算術、天文学という、自分にとってはあまり縁のない世界を描いているので、その世界を覗き見る面白さにつられて読み進むうち、次第にその面白さに夢中になってしまった。
そして江戸時代のこうした学問の世界のレベルの高さやその奥の深さにあらためて感心したのであった。

この小説ではさまざまな「勝負」が描かれる。
囲碁、算術そして暦の世界での勝負である。
まず囲碁では御城碁(おしろご)の世界が描かれる。
御城碁とは、囲碁の家元四家(本因坊家、井上家、安井家、林家)の棋士による、徳川将軍上覧の対局のことである。
なかでも本因坊家と安井家の争いは熾烈を極めており、本因坊家の天才棋士本因坊道策が安井算哲(渋川春海)のライバルとして描かれている。
さらに算術の世界では、数学の天才関孝和が渋川春海の前に大きな壁となって現れる。
そんなライバルたちとの交流によって鍛えられていく渋川春海の姿が瑞々しく描かれていく。
成長物語、青春小説としての面白さが前半のメインである。
そして後半はそうした研鑽のなかから得た知識を総合して天文の世界、そして新しい暦を生み出す苦闘の歳月へと続いていく。

道を究めるということの面白さがこの小説の醍醐味である。
大事業というのはひとりの力ではどうしようもない、また一朝一夕には叶わぬものである。
多くの人間たちの助けを借り、また影響や刺激を受けながら、長い年月をかけて忍耐強く積み重ねていくことで成し遂げられるものである。
そのことを、あらためて感じた。
渋川春海に刺激を与え影響を与えた人物としては、先に挙げた天才棋士本因坊道策や天才数学者・関孝和のほかにも、数学者・村瀬義益、天文学者・伊藤重孝と伊藤重孝、会津藩藩主・保科正之、老中・酒井忠清、そして儒者・山崎闇齋などが登場、それぞれが魅力的な人物として描かれている。
さらに数学者・荒木家の娘で、後に渋川春海の妻になる、えんの励ましもこの大事業の力強い後押しとして描かれている。

渋川春海という人物はけっして天才的な人物としては描かれていない。
というよりもむしろ、ちょっとしたことにもすぐに動揺を見せてしまう弱々しい面をもった人物として描かれている。
しかし算術や天文学への限りない情熱や探究心は生涯失うことはなかった。
そして数々の挫折を繰り返しながらも、けっして諦めることなく、前へ進んだ結果が、大事業への成功へと結びついたのであった。
そうした努力や執念は、やはり人を感動させるものがある。
彼を支え、励まし続けた人たちも、そうした姿に感動したからこそ彼を認め支え続けたのであろう。
あっぱれな人生を清々しい思いで読み終えたのであった。

ところでこれを読み終えた後で、知ったのだが、この小説が映画化されたそうだ。
監督は「おくりびと」の滝田洋二郎、渋川春海役は岡田准一、今年の秋(9月)に全国上映されるそうだ。
どんな映画になっているか、楽しみである。


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